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運行管理の教科書 / 第1章 貨物自動車運送事業法 / 1-18

CHAPTER 1 ── 1-18

事業者の義務か、
運行管理者の業務か

公開 2026.09.07 内容の確認日 2026.09.07 読了目安 8分
試験 頻出第1章 運行管理者

運行管理者試験で受験者を最も迷わせるのが、この切り分けです。同じ「安全」の仕事なのに、条文はそれを事業者の義務と運行管理者の業務に割り振っている。判定の軸は一つです。お金と人事と方針は事業者、日々の運用は運行管理者。この一本の軸で、ほとんどの選択肢は切れます。

SECTION 1試験ではこう問われる

「整える」のが事業者、「使って回す」のが運行管理者

なぜ二つに分かれているのか。事業者(会社)は予算と人事権を持つ側で、施設を作り、人を雇い、規程と方針を定めることができます。運行管理者は、そうして整えられた体制を使って、日々の運行を管理する専門職です。だから条文の割り振りも、資源と体制を「整える」義務は事業者に、整ったものを「使って回す」業務は運行管理者に、という原則で貫かれています。頻出の対照を表にします。

JIGYOSHA ── 事業者 「体制を作る」動詞 整備する ・ 保守する 選任する ・ 定める 策定する UNKO KANRISHA ── 運行管理者 「回す」動詞 管理する ・ 作成する 実施する ・ 確認する 指示する ・ 助言する 資源と体制を「整える」義務は事業者に、整ったものを「使って回す」業務は運行管理者に 輸送の安全に関する基本的な方針の策定は、運行管理者の業務ではありません
図 1-18-1選択肢の動詞を見てください。この一覧のどちらに入るかで、ほとんどの設問は切れます。
テーマ事業者の義務運行管理者の業務
休憩・睡眠施設整備し、保守する(管理も)適切に管理する
勤務時間・乗務時間定める(改善基準に従い)その範囲内で乗務割を作成し、従事させる
運転者選任する(必要な員数の確保)選任された者以外を乗務させない
アルコール検知器備え置く常時有効に保持し、点呼で用いる
補助者選任する選任のための助言、補助者への指導・監督
運行管理規程定める規程にもとづき業務を行う
輸送の安全の基本方針策定する(安全マネジメント)──(運行管理者の業務ではない)
点呼・記録・指導監督・
異常気象時の指示
体制を整える実施する(1-05〜1-16、1-20)

試験の作り方は、この表の左右を入れ替えるだけです。「運行管理者の業務として正しいものを選べ」という設問で、「休憩・睡眠施設を整備し、保守すること」とあれば誤り——整備と保守は事業者です。運行管理者に割り振られているのは「適切に管理する」まで。「勤務時間及び乗務時間を定めること」も誤り——定めるのは事業者、運行管理者はその範囲で乗務割を作る側です。「アルコール検知器を備え置くこと」も誤り——備え置くのは事業者、常時有効に保持するのが運行管理者です。動詞を見てください。整備・保守・選任・策定・定めるという「体制を作る動詞」が出てきたら事業者。管理・作成・実施・確認・指示という「回す動詞」なら運行管理者です。

根拠 ── 貨物自動車運送事業輸送安全規則 第3条・第18条〜第20条(要旨)

事業者は、休憩・睡眠施設の整備・管理・保守、勤務時間及び乗務時間の設定、必要な員数の運転者の選任、運行管理規程の制定等を行わなければならない。運行管理者は、乗務割の作成、休憩・睡眠施設の適切な管理、点呼の実施と記録、運転者への指導監督、異常気象時の指示など、第20条に列挙された業務を行う。事業者は運行管理者に対しその業務を行うため必要な権限を与え、運行管理者がその業務として行う助言を尊重しなければならない。

最後にもう一つ、上の表の下から二段目は独立して覚える価値があります。輸送の安全に関する基本的な方針の策定は、運行管理者の業務ではありません。もっともらしく選択肢に混ざる定番の誤りで、方針の策定は経営者、すなわち事業者の仕事です。

SECTION 2現場ではこう現れる

社長が運行管理者を兼ねる会社ほど、この区別が要ります

熊本の運送会社の多くでは、社長が運行管理者を兼務しています。一人の人間の中に事業者と運行管理者が同居しているのだから、区別など意味がない——と思えますが、実務では逆です。兼務の会社ほど、この区別が効いてきます。

社長(運行管理者を兼務) 毎日の仕事(運行管理者の帽子) 点呼・配車・記録・指導 やらなければ、その日の運行が止まる → 必ず行われる 年単位の仕事(事業者の帽子) 規程・勤務時間・施設・選任 今日やらなくても明日は回る → 何年も手つかず 巡回指導で指摘されるのは、たいてい右側です。放っておくと必ず片方だけが錆びます
図 1-18-2兼務の会社ほど、この区別が効いてきます。毎月の帳票と年間の体制を、分けて点検する理由です。

「整える仕事」は、後回しにされ続けるからです

日々の点呼や配車(運行管理者の帽子の仕事)は、やらなければその日の運行が止まるので必ず行われます。一方、勤務時間の設定、運行管理規程の見直し、休憩施設の保守、補助者の選任(事業者の帽子の仕事)は、今日やらなくても明日の運行は回るため、何年も手つかずになりがちです。巡回指導で指摘されるのは、たいていこちら側です。当事務所の顧問訪問で毎月の帳票(運行管理者側)と年間の体制(事業者側)を分けて点検しているのは、この構造への対処です。放っておくと必ず片方だけが錆びるからです。

権限と助言の条文は、運行管理者を守る条文です

事業者は運行管理者に必要な権限を与え、その助言を尊重する義務を負います。裏返せば、運行管理者が「この運行は改善基準を超えるので組めません」と言ったとき、それを営業判断で押し切る会社は、条文の構造そのものに反しています。専任の運行管理者を雇っている会社では、この条文が運行管理者の立場を支える根拠になることを、社長と運行管理者の双方が知っておくべきです。

「事業者の帽子」の仕事 年次チェック年に一度、必ず開く
  • □休憩・睡眠施設の整備と保守(傷み・清掃・寝具)施設
  • □勤務時間及び乗務時間の設定(改善基準に従って)勤務時間
  • □必要な員数の運転者の選任人
  • □補助者の選任(基礎講習の受講から)補助者
  • □運行管理規程の見直し(実態と合っているか)規程
  • □輸送の安全に関する基本的な方針の策定・掲示方針
  • ■運行管理者に必要な権限を与え、その助言を尊重しているか権限

最後の一行は、運行管理者を守る条文です。「この運行は改善基準を超えるので組めません」を営業判断で押し切る会社は、条文の構造そのものに反しています。

SECTION 3崩れると、何が起きるか

事故のあと、責任は「どちらの帽子か」で問われます

重大事故や監査の場面で、この切り分けは抽象論から責任論に変わります。点呼を怠っていたのは運行管理者の業務の懈怠。しかし、点呼ができない人員体制しか用意していなかったのなら、それは事業者の義務違反です。処分もこの構造に対応していて、運行管理者には資格者証の返納命令があり、事業者には車両停止から許可取消しまでの行政処分があります。日頃から「これはどちらの帽子の仕事か」を意識して記録を残しておくことは、単なる試験知識ではなく、いざというとき会社と運行管理者それぞれが「自分の側の義務は果たしていた」と示すための備えです。

確認の一問一答

「休憩・睡眠施設を整備し、保守すること」は、運行管理者の業務である。○か×か。

×。整備と保守は事業者の義務です。運行管理者の業務は、その施設を「適切に管理すること」です。

「勤務時間及び乗務時間を定めること」は、運行管理者の業務である。○か×か。

×。勤務時間・乗務時間を定めるのは事業者です。運行管理者は、定められた範囲内で乗務割を作成し、運転者を従事させます。

「アルコール検知器を営業所に備え置くこと」は事業者の義務であり、「アルコール検知器を常時有効に保持すること」は運行管理者の業務である。○か×か。

○。備え置くのは事業者、常時有効に保持するのは運行管理者です。動詞で切り分ける典型例です。

根拠貨物自動車運送事業輸送安全規則 第3条・第18条・第20条・第21条/貨物自動車運送事業法 第16条(安全管理規程等)
確認本記事は法令および九州運輸局の公示にもとづき作成し、記載の確認日時点の制度を反映しています。個別の判断は必ずご相談ください。

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