CHAPTER 1 ── 1-05
乗務前点呼
— 三つの確認事項と、記録の書き方
点呼は、運行管理の一日の始まりであり、巡回指導で最初に開かれる帳票でもあります。乗務前点呼で確認すべきことは三つ。酒気帯び、体調(疾病・疲労・睡眠不足)、日常点検。この三つと「対面が原則」という骨格さえ正確に持てば、試験の点呼問題も、現場の記録簿も、同じ型で処理できます。
SECTION 1試験ではこう問われる
確認は三つ、方法は対面、例外は「運行上やむを得ない場合」だけ
乗務前点呼の骨格は三行で書けます。誰が——運行管理者(または補助者。ただし総回数の3分の1以上は運行管理者自身。1-08)。どうやって——対面で。運行上やむを得ない場合に限り電話その他の方法で。何を——次の三つを確認し、安全確保のために必要な指示を与えます。
| 確認事項 | 見るもの・使うもの |
|---|---|
| ① 酒気帯びの有無 | 目視等による確認に加え、アルコール検知器を用いる(営業所ごとに備え、常時有効に保持。1-07) |
| ② 安全な運転ができないおそれ | 疾病・疲労・睡眠不足その他の理由。顔色、応答、申告から判断する |
| ③ 日常点検 | その実施、またはその確認(道路運送車両法上の日常点検。第3章) |
貨物自動車運送事業者は、乗務しようとする運転者等に対して対面により、又は対面による点呼と同等の効果を有するものとして国土交通大臣が定める方法(運行上やむを得ない場合は電話その他の方法)により点呼を行い、①酒気帯びの有無、②疾病、疲労、睡眠不足その他の理由により安全な運転をすることができないおそれの有無、③日常点検の実施又はその確認について報告を求め、確認を行い、事業用自動車の運行の安全を確保するために必要な指示を与えなければならない。
試験のひっかけは、ほぼ一点に集中しています。「運行上やむを得ない場合」の解釈です。これは、遠隔地で乗務を開始または終了するため、営業所で対面点呼を行えない場合を指します。次のような文が出たら誤りです——「運行管理者が営業所に不在だったため、電話で乗務前点呼を行った」。運行管理者や補助者の不在、点呼を行う者の都合は「運行上やむを得ない場合」にあたりません。営業所側の事情は理由にならない、と覚えてください。
もう一つの定番は、確認事項の入れ替えです。「乗務前点呼では、道路及び運行の状況について報告を求め——」とあれば誤り。道路・運行の状況の報告は乗務後点呼(1-06)の事項です。乗務前は「これから運転できる状態か」、乗務後は「運転してきた結果どうだったか」。時間の向きで整理すると混同しません。
SECTION 2現場ではこう現れる
点呼記録簿は、「やった証拠」ではなく「判断した記録」です
巡回指導で点呼記録簿が開かれるとき、見られているのは実施の有無だけではありません。判断の跡です。よくある記録簿は、実施のチェックだけが並び、アルコール検知器の数値欄と指示事項欄が空白のまま続いています。これは現場の感覚では「問題がなかったから書くことがない」なのですが、確認する側の読み方では「確認した証拠がない」になります。
毎朝の記録で埋めるべきところ
第一に、検知器の数値。アルコールが検知されなかった日も「0.00」と書きます。空欄と0.00は意味が違います。第二に、実施者名。運行管理者か補助者か、誰が行った点呼かが後から分かること。3分の1ルール(1-08)の計算は、この記録が根拠になります。第三に、指示事項。毎日特別な指示があるはずはありませんが、天候、道路情報、荷扱いの注意など、その日運転者に伝えたことを短く残す。「指示なし」が続く記録簿より、一言ずつ残る記録簿のほうが、点呼が実際に機能していることを語ります。
- ✓アルコール検知器の数値 ── 検知されなかった日も数値を書く0.00
- ✓実施者名 ── 運行管理者か補助者か、誰が行った点呼か実施者
- ✓指示事項 ── 天候、道路情報、荷扱いの注意を一言指示
- ✓点呼の方法 ── 対面/やむを得ない場合の電話等の別方法
- □数値欄が空欄のまま続いていないか要確認
- □指示事項が「なし」だけで埋まっていないか要確認
空欄と 0.00 は意味が違います。現場では「問題がなかったから書くことがない」でも、確認する側の読み方では「確認した証拠がない」になります。
早朝出庫の会社の、現実的な組み方
出庫が早朝に集中する会社では、「その時間、誰が点呼をするのか」が実務の急所です。選任済みの補助者を朝番に立て、運行管理者は総回数の3分の1以上を自ら行う配分にする。これが小規模の会社での標準的な解です。社長が運行管理者を兼ねて全点呼を一人で抱えている場合、休めない体制そのものが持続性のリスクなので、補助者の選任(基礎講習の受講)を先に整えることをお勧めしています。
SECTION 3不備だと、何が起きるか
点呼の不備は、巡回指導でも監査でも重く扱われます
点呼は輸送の安全の入口にあたるため、未実施や記録の不備は行政処分の基準上も重い項目です。記録簿の欠落が続いていれば巡回指導の評価は下がり、監査に移行すれば点呼未実施は車両停止処分に直結します。とりわけ酒気帯びの確認を欠いた状態で飲酒運転の事故が起きた場合、会社が受ける処分と社会的な結果は、日々の一回の点呼の重さとは比較になりません。
巡回指導の通知が来てから、空白の期間の記録簿をまとめて書き足す——これは不備の解消ではなく、虚偽記録という別のより重い問題を作る行為です。抜けている期間は抜けているものとして、その日以降の記録を正しくつけ始めるのが唯一の直し方です。通知が来てからの整え方は、巡回指導対応のページで説明しています。
確認の一問一答
運行管理者が営業所に不在であったため、補助者も不在であったことから、乗務前点呼を電話により行った。この扱いは適切か。
不適切です。電話その他の方法によることができる「運行上やむを得ない場合」とは、遠隔地で乗務を開始または終了するため対面で行えない場合をいい、点呼を行う側の不在はこれにあたりません。
乗務前点呼における確認事項は、①酒気帯びの有無、②疾病・疲労・睡眠不足等により安全な運転をすることができないおそれの有無、③道路及び運行の状況、の三つである。○か×か。
×。③は日常点検の実施又はその確認です。道路及び運行の状況の報告は、乗務後点呼の事項です。
アルコール検知器で酒気が検知されなかった場合、点呼記録簿への数値の記載は省略してよい。○か×か。
×というのが実務の答えです。検知されなかったことも確認の結果であり、記録に残します。空欄は「確認していない」と区別がつかず、巡回指導での定番の指摘になります。