CHAPTER 1 ── 1-16
速報の5類型
— 死2・重5・負10・危険物・酒気帯び
事故が起きたとき、会社が国に対して行う手続きは二段あります。30日以内の事故報告書と、24時間以内の速報。速報が必要になるのは重大な事故に限られ、その類型は五つに決まっています。死2・重5・負10・危険物・酒気帯び。この十一文字を、試験のためにも、深夜の事故の電話を受ける日のためにも、そのまま覚えてください。
SECTION 1試験ではこう問われる
報告書は30日、速報は24時間。速報は五つだけ
まず二段構えの全体像です。自動車事故報告規則に定める事故(転覆、転落、火災、死傷者を生じた事故など)を起こしたときは、事故があった日から30日以内に事故報告書を提出します(1-15)。そのうち特に重大なものに限って、24時間以内にできる限り速やかに、電話・FAXその他適当な方法で速報します。速報の対象は次の五類型です。
| 類型 | 内容 | 覚え方 |
|---|---|---|
| ①死者 | 2人以上の死者を生じた事故 | 死2 |
| ②重傷者 | 5人以上の重傷者を生じた事故 | 重5 |
| ③負傷者 | 10人以上の負傷者を生じた事故 | 負10 |
| ④危険物等 | 転覆・火災等により、積載する危険物、火薬類、高圧ガス等が飛散・漏えいした事故 | 危険物 |
| ⑤酒気帯び | 酒気帯び運転を伴う事故(人数・被害の大小を問わない) | 酒気帯び |
試験のひっかけは、数字の入れ替えと「速報と報告書の関係」に集中します。第一に、死者1人の事故は速報の対象ではありません(報告書の対象ではあります)。旅客の事業では死者1人から速報ですが、貨物は2人以上——ここを入れ替えて出題されます。第二に、速報をしても報告書は省略できません。速報は報告書の前倒しではなく、追加の義務です。「速報を行ったので、事故報告書の提出を省略した」は誤りです。第三に、酒気帯びは被害の大きさを問いません。物損だけでも、酒気帯び運転を伴えば速報の対象です。
事業者は、規則第2条に定める事故があった場合には、事故があった日から30日以内に、自動車事故報告書を運輸支局長等を経由して国土交通大臣に提出しなければならない。このうち、2人以上の死者を生じた事故、5人以上の重傷者を生じた事故、10人以上の負傷者を生じた事故、積載された危険物等の漏えい等の事故、酒気帯び運転を伴う事故等については、24時間以内においてできる限り速やかに、その事故の概要を運輸支局長等に速報しなければならない。
なお「重傷」には規則上の定義があります(入院を要する期間や治療期間による区分)。試験では定義の細部より、五類型と数字の組み合わせが問われるので、まず「死2・重5・負10・危険物・酒気帯び」を固め、重傷の定義は余力で確認する順番で構いません。
SECTION 2現場ではこう現れる
速報の判断は、深夜の電話の中でやることになります
速報の実務が難しいのは、判断の場面が必ず混乱の中にあるからです。事故の一報は深夜や早朝に、断片的な情報で届きます。負傷者が何人か、相手は入院するのか、積み荷は漏れているのか——確定しないまま24時間の時計が回り始めます。だから現場の原則は一つです。迷ったら速報する。速報して結果的に対象外だったことは問題になりませんが、対象だったのに速報しなかったことは記録に残る不作為になります。
事故発生時の順番を、紙にして貼っておく
運転者がやること——救護、危険防止、警察への報告——は道路交通法の義務(第4章)で、これは現場で完結します。会社側がやることは、運転者からの一報を受けた後の流れです。①負傷者の数と程度、積み荷の状態を確認する。②五類型に当たりうるか判断する。当たりうるなら③運輸支局へ電話で速報する(夜間・休日の連絡先を含めて、電話番号を事故対応手順書に書いておきます)。④30日以内の報告書と、社内の事故の記録(3年保存。1-10)に落とす。この順番を一枚にして事務所の壁と各車両に置いておくだけで、当日の動きがまったく変わります。
- 1けが人は何人か。うち入院・重傷は死2/重5/負10
- 2積み荷は何か。漏れ・飛散はないか危険物
- 3酒気帯びの疑いはないか(物損だけでも速報)酒気帯び
- 4発生日時・場所・車番・運転者名基本
- 5警察への通報は済んでいるか現場
- 6速報先の電話番号(夜間の取扱いを含む)記入済み
速報は24時間以内です。深夜に「運輸支局の電話番号はどこだ」から始めるのでは遅い。番号は事故が起きる前に、この紙に書いておくものです。
速報は24時間以内です。深夜に「運輸支局の電話番号はどこだ」から始めるのでは遅い。熊本運輸支局の連絡先と夜間の取り扱いは、事故が起きる前に手順書へ書き込んでおくものです。顧問先には、この事故対応手順書の整備を最初の訪問で行っています。
SECTION 3怠ると、何が起きるか
重大事故の後には、監査が来る前提で動きます
速報の対象になるような事故は、それ自体が監査の端緒になります。つまり速報を出す場面とは、「この後、点呼記録・業務記録・教育記録のすべてが確認される」局面の始まりでもあります。速報や報告書の提出漏れ・虚偽記載は、それだけで処分の対象になるうえ、事故対応の誠実さ全体への評価を決定的に損ないます。逆に、速報が適切で、日々の帳票が揃っている会社は、重大事故の後でも「管理はされていた」という事実を示すことができます。速報の備えとは、結局のところ平時の帳票(1-05、1-10)の話に戻ってくるのです。
なお、速報対象の事故を起こした営業所の運行管理者には特別講習(1-19)、事故を起こした運転者には特定診断と特別な指導(1-21)が続きます。事故は一回の出来事ではなく、講習・診断・記録という一連の手続きの入口だと捉えておいてください。
確認の一問一答
事業用自動車の事故により1人の死者が生じた場合、24時間以内に速報しなければならない。○か×か。
×。貨物の速報対象は「2人以上の死者」です。死者1人の事故は速報の対象ではありませんが、30日以内の事故報告書の提出は必要です。
速報を行った事故については、自動車事故報告書の提出を省略することができる。○か×か。
×。速報は報告書に代わるものではありません。速報を行った場合でも、事故があった日から30日以内に事故報告書を提出する必要があります。
負傷者が生じていない物損事故であっても、運転者に酒気帯び運転があった場合は速報の対象となる。○か×か。
○。酒気帯び運転を伴う事故は、被害の大小や負傷者の有無を問わず速報の対象です。