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運行管理の教科書 / 第1章 貨物自動車運送事業法 / 1-15

CHAPTER 1 ── 1-15

事故の記録と、事故報告書
— 24時間・30日・3年の三層

公開 2026.09.07 内容の確認日 2026.09.07 読了目安 8分
試験 頻出監査 重点第1章 事故

事故が起きたときにやることは、三つの層に分かれています。すべての事故について社内に記録を残すこと。報告規則に定める事故にあたれば、30日以内に事故報告書を出すこと。そのうち限られた類型では、24時間以内に速報すること。この三層が混ざったまま覚えていると、試験でも現場でも取り違えます。まず層を分けます。

SECTION 1試験ではこう問われる

すべて記録、該当すれば報告書、限られた類型だけ速報

いちばん外側にあるのが社内の記録です。事業用自動車に係る事故が発生したときは、決められた事項を記録し、その運行を管理する営業所で3年間保存します。報告書の提出が必要かどうかとは関係なく、記録は残します。

JIKO ── 事故発生 速報 24時間以内に 電話その他の方法で 限られた類型のみ(1-16) 報告書 30日以内に 自動車事故報告書 3通 運輸監理部長・運輸支局長を経由して国土交通大臣へ 報告規則に定める事故 記録 営業所で 3年間保存 事業用自動車に係る事故が発生した場合。報告書の要否にかかわらず 速報をしたからといって、報告書の提出が不要になるわけではありません
図 1-15-1外側から、記録(すべて・3年)/報告書(該当すれば・30日)/速報(限られた類型・24時間)。層の広さと期限の短さは逆になります。
根拠 ── 貨物自動車運送事業輸送安全規則 第9条の2(事故の記録)(要旨)

貨物自動車運送事業者は、事業用自動車に係る事故が発生した場合には、乗務員等の氏名、事業用自動車の自動車登録番号その他の当該事業用自動車を識別できる表示、事故の発生日時、事故の発生場所、事故の当事者(乗務員等を除く。)の氏名、事故の概要(損害の程度を含む。)、事故の原因、再発防止対策を記録し、当該記録をその事業用自動車の運行を管理する営業所において三年間保存しなければならない。

JIJITSU ── 起きた事実 ① 乗務員等の氏名 ② 自動車登録番号その他の表示 ③ 事故の発生日時 ④ 事故の発生場所 ⑤ 当事者(乗務員等を除く)の氏名 ⑥ 事故の概要(損害の程度を含む) HANDAN ── 会社が書くこと ⑦ 事故の原因 ⑧ 再発防止対策 この二つが空欄のままだと、 運転者への指導も、同種事故の 防止も、出発点を持ちません 保存は、事故が発生した日から三年間。場所は運行を管理する営業所です
図 1-15-2八項目のうち、後ろの二つだけが会社の判断です。巡回指導で見られるのも、たいていこの二つの欄です。

ひっかけの型は三つです。第一に保存年限。事故の記録は三年です。点呼記録や業務記録の一年と並べて出題されます(1-10)。第二に報告書の期限と経路。「事故があった日から15日以内」「地方運輸局長に直接提出」といった変形が出ます。正しくは30日以内、3通を、使用の本拠の位置を管轄する運輸監理部長または運輸支局長を経由して国土交通大臣に提出します。第三に速報と報告書の関係。速報は電話その他適当な方法により24時間以内にできる限り速やかに行うもので、これを行っても報告書の提出義務は残ります。

SECTION 2現場ではこう現れる

「保険会社に任せてある」と、社内の記録は別のものです

事故のあと、多くの会社では保険会社とのやりとりが中心になります。相手方との示談、修理、代車。その流れの中で、自社の記録が作られないまま数か月が過ぎる——これがいちばん多い形です。保険の書類は損害の処理のためのもので、規則が求める記録とは目的が違います。原因と再発防止対策の欄は、保険会社は書いてくれません。

記録すべき「事故」は、報告対象の事故より広い

事故報告書を出すのは、報告規則に定める事故に限られます。一方、社内の記録は「事業用自動車に係る事故」が対象です。構内での接触、荷崩れによる損傷、自損。これらを「大したことがないから」と記録していない会社は多いのですが、同じ場所で二度目が起きたときに、一度目の記録があるかどうかで話がまったく変わります。

原因と再発防止対策は、二行で足ります

この欄を埋められない理由は、たいてい「立派なことを書かなければ」と思っているからです。「構内の左折時、死角の確認不足」「同じ経路の運転者全員に、当該箇所での一時停止を指示(◯月◯日、点呼時)」——この程度で十分に機能します。むしろ、対策が具体的で小さいほうが、実際に守られます。ここに書いたことが、教育の記録(1-19・1-20)や運転者等台帳(1-14)とつながっていく形が理想です。

事故発生時 初動メモ車内・事務所に1枚ずつ
  • 1負傷者の救護。危険防止の措置。警察へ通報(運転者がその場で行う)現場
  • 2会社へ連絡 ── 日時・場所・相手方・負傷の有無・積荷の状態連絡
  • 3速報が必要な類型にあたらないかを確認する(1-16)24時間
  • 4事故の記録の八項目を、その日のうちに埋められるところまで書く当日
  • 5報告規則に定める事故にあたる場合は、報告書の作成に着手する30日
  • 6原因と再発防止対策を決め、点呼で全運転者に伝える対策

夜間・休日に社長へ連絡がつかない、という穴がいちばん多い。連絡先は二番手まで書いて、車内に置いておきます。

SECTION 3不備だと、何が起きるか

事故は、監査の端緒になります

報告書の未提出や遅延は、それ自体が報告規則に違反する行為です。加えて、重大な事故は監査の端緒として扱われますので、事故をきっかけに点呼記録簿や業務記録が一斉に確認される場面が現実に起こります。事故対応の巧拙よりも、日々の帳票が揃っているかどうかで結果が決まる——という意味では、事故の記録は日常の帳票管理の延長線上にあります。

もう一つ、記録がないことの重さは、同種の事故が再発したときに現れます。一度目の原因と対策が残っていれば、「対策を講じたが、なお起きた」という説明ができます。記録がなければ、外から見えるのは「同じ事故が二度起きた会社」だけです。記録は、会社が学んだことの証拠でもあります。

やってはいけない直し方

過去の事故について、監査の連絡が来てから記録をまとめて作る——これは記録の作成ではなく、事実と異なる書類を作る行為です。また、原因の欄に「運転者の不注意」とだけ書いて済ませるのも、実質的には空欄と同じです。会社として何を変えたのかが書かれていない記録は、再発防止対策の記載を欠いた記録として扱われます。

確認の一問一答

事業用自動車に係る事故が発生した場合の記録は、当該事故が発生した日から一年間保存しなければならない。○か×か。

×。三年間です。保存の場所は、その事業用自動車の運行を管理する営業所です。点呼記録簿・業務記録の一年と混同しやすい箇所です。

自動車事故報告書は、いつまでに、何通を、どこへ提出するか。

事故があった日から30日以内に、当該事故ごとに3通を、当該自動車の使用の本拠の位置を管轄する運輸監理部長または運輸支局長を経由して、国土交通大臣に提出します。

速報を行った事故については、自動車事故報告書の提出を要しない。○か×か。

×。速報は、電話その他適当な方法により24時間以内にできる限り速やかに行うもので、報告書の提出義務とは別です。速報をした事故についても、報告書は提出します。

根拠貨物自動車運送事業輸送安全規則 第9条の2(事故の記録)/自動車事故報告規則 第2条(定義)・第3条(報告書の提出)・第4条(速報)
確認本記事は法令および九州運輸局の公示にもとづき作成し、記載の確認日時点の制度を反映しています。報告を要する事故の類型、速報を要する類型および様式は改正されることがありますので、実際の手続は最新の規則および運輸支局の案内をご確認ください。事故の対応については、必ずご相談ください。

この帳票、自社では回っていますか。

事故の記録と日々の帳票を拝見し、監査で問われそうな箇所をその場でお伝えします。運送業の帳票点検・巡回指導対応・顧問を、お引き受けしています。

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