CHAPTER 1 ── 1-10
保存年限の全体地図
— 1年・3年・退職後3年
運送業の帳票には、それぞれ法定の保存期間があります。ばらばらに覚えると苦しい分野ですが、実は三つの束——日々の記録は1年、事故と教育は3年、人の台帳は退職後3年——に整理すると、一枚の地図になります。試験は年数の入れ替えで問い、巡回指導は「その期間分、実際にあるか」を見ます。
SECTION 1試験ではこう問われる
三つの束で覚える
まず全体の表です。上から順に「日々の記録」「重い出来事の記録」「人の記録」と束になっていることを確認してください。
| 帳票 | 保存期間 | 起算点・備考 |
|---|---|---|
| 点呼の記録 | 1年 | 記録した日から |
| 業務記録(乗務等の記録) | 1年 | 記録した日から |
| 運行記録計の記録 | 1年 | 装着義務は総重量7t以上または最大積載量4t以上(1-12) |
| 運行指示書 | 1年 | 運行の終了の日から(1-13) |
| 事故の記録 | 3年 | 事故報告書(30日以内提出)とは別の、社内の記録(1-15) |
| 指導監督の記録(教育記録) | 3年 | 年間計画にもとづく指導、特別な指導とも(1-20・1-21) |
| 運転者等台帳 | 退職後3年 | 運転者等でなくなった日から3年(1-14) |
覚え方は表の構造そのままです。「日々の記録は1年、事故と教育は3年、人は退職後3年」。毎日発生するもの(点呼・業務・記録計・指示書)は1年。めったに起きないが重いもの(事故)と、安全の積み上げそのもの(教育)は3年。人に紐づく台帳だけは、在籍中ずっと備え置いたうえで、辞めた日から3年——起算点が「作成日」ではないことに注意してください。
試験は二種類の入れ替えで問うてきます。一つは年数の入れ替え——「点呼記録は3年間保存しなければならない」は誤り、1年です。「事故の記録は1年間」も誤り、3年です。もう一つは起算点の入れ替え——「運行指示書は作成の日から1年」は誤り、運行の終了の日からです。年数と起算点、二段構えで確認する癖をつけてください。
点呼の記録・業務の記録・運行記録計による記録は1年間、運行指示書及びその写しは運行の終了の日から1年間、事故の記録及び運転者等に対する指導監督の記録は3年間、運転者等台帳は運転者等でなくなった日から3年間、それぞれ保存しなければならない。
SECTION 2現場ではこう現れる
「ある」と「出せる」は別の状態です
巡回指導の現場で問われるのは、保存しているかではなく、その場で出せるかです。指導員は「直近の点呼記録簿を見せてください」「この運転者の教育記録は」と、帳票を横断しながら特定の月、特定の人を指名してきます。倉庫のどこかに段ボールである、では実務上「ない」のと同じ扱いになりかねません。
月別・人別、二つの背表紙で足ります
小規模の会社なら、整理の仕組みは二系統で十分です。日々の記録(点呼・業務・記録計・指示書)は月別のファイルに。人の記録(台帳・教育・診断・健診)は運転者別のファイルに。この二つの背表紙が揃っていれば、指導員のどの質問にも数十秒で紙が出ます。逆に、記録の種類ごとに年単位で綴じてあると、「この人の」という質問のたびに全部をめくることになります。
- ✓月別ファイル ── 点呼記録簿1年
- ✓月別ファイル ── 業務記録(日報)1年
- ✓月別ファイル ── 運行記録計の記録/運行指示書1年
- ✓運転者別ファイル ── 運転者等台帳退職後3年
- ✓運転者別ファイル ── 教育記録・適性診断・健康診断3年
- ■事故の記録は、事故ごとに一件一葉で(3年)3年
この二つの背表紙が揃っていれば、指導員のどの質問にも数十秒で紙が出ます。「ある」と「出せる」は別の状態です。
電子で持つなら、消えない置き方まで
これらの記録は電磁的記録での保存が認められています。デジタコのデータやクラウドの点呼記録は紙に出し直す必要はありません。ただし、機器の入れ替えでデータごと消えた、退職した事務員のパソコンにしかなかった、という消失は毎年どこかで起きています。保存年限の管理は、電子の場合「どこに、誰が触れる形で、いつまで」の設計まで含めて初めて完成します。
なお、隣の法律の年限を一つだけ添えておきます。健康診断の個人票は労働安全衛生法の世界で5年保存です。輸送安全規則の1年・3年と混ぜて覚えないよう、別の棚に置いてください(試験では第2章・労基法側の論点です)。
SECTION 3不備だと、何が起きるか
記録がない期間は、「やっていない期間」と読まれます
保存義務の怖さは、罰則の一覧表よりも推定のされ方にあります。点呼記録が3か月分ない場合、指導・監査の場では「記録を紛失した3か月」ではなく「点呼をしていなかった3か月」として扱われるのが原則です。実施の証明責任は会社側にあり、記録がその唯一の証拠だからです。だからこそ、抜けに気づいた時点でのまとめ書きは絶対にしない(1-05の注意ボックスのとおり、それは虚偽記録というより重い問題になります)。抜けは抜けとして、今日から正しくつけ始める。それが唯一の回復手順です。
もう一つ、帳票同士の整合も見られます。業務記録では走っているのに点呼記録がない日、運行記録計の稼働と業務記録の乗務時間が食い違う月——単票では整っていても、突き合わせで穴が見えるのが帳票の性質です。毎月の顧問訪問で当事務所が行っているのは、まさにこの突き合わせを、指導員より先にやっておく作業です。
確認の一問一答
点呼の記録は、記録した日から3年間保存しなければならない。○か×か。
×。点呼の記録の保存期間は1年間です。3年間の保存が必要なのは、事故の記録と指導監督の記録です。
運行指示書は、作成した日から1年間保存しなければならない。○か×か。
×。運行指示書の保存期間は「運行の終了の日」から1年間です。年数だけでなく起算点まで問われます。
運転者等台帳は、運転者等でなくなった場合、直ちに廃棄してよい。○か×か。
×。運転者等でなくなった日から3年間、保存しなければなりません。