CHAPTER 1 ── 1-09
遠隔点呼・自動点呼・IT点呼
— 「対面が原則」の例外は、どこまで来たか
点呼は対面が原則です。この原則は動いていません。動いているのは例外の側で、機器とシステムの要件を満たせば離れた場所から点呼ができる仕組みが整えられ、運行管理者が立ち会わない自動点呼も制度化されました。この分野は改正が続いているため、この記事では要件の数字を並べるのではなく、例外がどう分類されているかという地図を持って帰っていただく形にします。
SECTION 1試験ではこう問われる
例外は二系統。「やむを得ない場合の電話等」と「大臣が定める方法」
条文を読むと、点呼の方法は三段構えになっています。原則が対面。これと並んで対面による点呼と同等の効果を有するものとして国土交通大臣が定める方法が置かれ、さらに運行上やむを得ない場合には電話その他の方法によることができる。遠隔点呼も自動点呼も、二つ目の「大臣が定める方法」の中身として整備されたものです。電話の話とは別の系統である、というのが最初の分かれ道になります。
| 方法 | 位置づけ |
|---|---|
| 対面 | 原則。営業所で、運行管理者または補助者が行う |
| 電話その他の方法 | 運行上やむを得ない場合に限る。遠隔地で業務を開始・終了するため対面で行えない場合であって、点呼を行う側の不在や都合は理由にならない(1-05) |
| 遠隔点呼 | 「大臣が定める方法」の一つ。要件を満たす機器・システムを用い、運行管理者等と運転者等が離れた場所から実施する。運行管理者等の立会いはある(画面越しに行う) |
| 自動点呼 | 同じく「大臣が定める方法」。国土交通省の認定を受けた機器・システムを用い、運行管理者等の立会いなしに実施する。業務後に加えて業務前についても制度化が進んでいる |
| IT点呼 | 安全性優良事業所(Gマーク)等を対象として認められてきた運用。遠隔点呼の制度化後の取扱いを含め、要件は公示・通達による |
貨物自動車運送事業者は、事業用自動車の運行の業務に従事しようとする運転者等に対して対面により、又は対面による点呼と同等の効果を有するものとして国土交通大臣が定める方法(運行上やむを得ない場合は電話その他の方法)により点呼を行い、報告を求め、確認を行い、事業用自動車の運行の安全を確保するために必要な指示を与えなければならない。
覚え方は一行です。「原則は対面。例外は“やむを得ない場合の電話等”と“大臣が定める方法”。後者は機器と手続がセット」。この形さえ持っていれば、制度名が増えても位置づけを間違えません。
ひっかけの型は二つあります。第一に電話の拡大解釈。「営業所間を電話で結んで点呼を行えば、遠隔点呼を実施したことになる」——誤りです。遠隔点呼は要件を満たす機器・システムと所定の手続を前提とした方法であり、電話を使うことと同義ではありません。第二に手続の省略。「機器さえ導入すれば、届出をせずに遠隔点呼を開始できる」——誤り。実施にあたっては所定の届出が必要とされています。要件の細部は改正が続いている領域ですので、試験対策としては分類と手続の有無を押さえ、数字や細目は直前に最新の資料で確認する、という構えが結局いちばん堅いと考えています。
SECTION 2現場ではこう現れる
機器を入れる前に、いまの点呼が回っているかどうか
遠隔点呼や自動点呼に関心を持たれるのは、たいてい「朝の点呼を誰がやるか」で行き詰まっている会社です。社長が運行管理者を兼ね、出庫は5時、帰庫は21時。補助者を選任したいが、講習に出せる人がいない。この状況で機器の話が魅力的に見えるのは自然なことです。
ただ、順番としては先に確認したいことがあります。いまの点呼記録簿に、判断の跡が残っているかです。検知器の数値欄が空白のまま、指示事項も空欄という状態で機器を導入しても、記録の穴はそのまま残ります。機器は、回っている運用を省力化する道具であって、回っていない運用を回してくれる道具ではありません。導入のご相談を受けたときは、まず現在の点呼体制の棚卸しから入るようにしています。
小規模の会社にとっての現実的な使いどころ
効きやすいのは、営業所と離れた車庫から出庫する場合、複数営業所を一人の運行管理者が見ている場合、そして深夜・早朝の帰庫時です。とくに業務後の自動点呼は、「帰ってきた運転者を待つためだけに人が残っている」という時間を減らせます。逆に、車両が数台で全員が同じ時間に同じ場所から出る会社では、対面のほうが早くて確実、という結論になることも珍しくありません。
導入で実際に手間がかかるところ
機器の選定そのものより、①要件を満たす機器・システムであることの確認(認定機器の一覧が公表されています)、②実施する営業所・車庫の環境が要件を満たすかの確認、③届出書類の作成、④社内の運用ルールと記録の様式を決めること、の四つに時間がかかります。当事務所では、③と④をお引き受けし、導入後の記録の形が巡回指導で説明できるものになっているかまでを見ています。導入費用については補助制度が設けられる年もありますので、実施年度の公募内容をご確認ください。
- □いまの点呼記録簿に、検知器の数値が毎回入っている記録
- □指示事項の欄が「なし」の連続になっていない記録
- □補助者の選任と、三分の一ルールの配分ができている(1-08)体制
- □導入したい制度(遠隔/自動)の対象に、自社の営業所が入る要件
- □使う機器が、要件を満たすもの・認定を受けたものである機器
- □届出の書類と、実施後の記録の取り出し方を決めてある手続
上の二つに □ が付かないうちに機器を入れても、記録の穴はそのまま残ります。機器は、回っている運用を省力化する道具です。
SECTION 3不備だと、何が起きるか
手続を欠いた「遠隔」は、点呼の未実施と評価されます
いちばん危ないのは、制度の名前だけが先に社内へ入ってしまうことです。「遠隔点呼が認められたらしい」という理解から、営業所間を電話やビデオ通話でつなぐ運用を始め、届出も機器の要件確認もしていない——この状態は、対面でも「大臣が定める方法」でもないため、点呼を行っていない期間として扱われる可能性があります。点呼未実施は行政処分の基準上も重い項目であり、巡回指導の評価にも直結します。
もう一つは、記録の形が制度に追いついていない場合です。遠隔点呼や自動点呼では、実施の記録がシステム側に残ります。その記録が保存年限(1年間)にわたって取り出せる状態にあるか、営業所で確認できるかを、導入時に決めておく必要があります。「機器の中にはあるはずだが、出し方が分からない」は、監査の場では記録がないのと同じ扱いになります。
この分野は、告示・実施要領・認定機器の一覧がいずれも改正・更新の続いている領域です。制度の名称(遠隔点呼/自動点呼/IT点呼)ごとに対象と要件が異なり、機器の販売資料の説明だけで判断すると、自社が使える制度と違うものを導入してしまうことがあります。導入を決める前に、運輸支局または最新の実施要領で、自社の営業所が対象になるかをご確認ください。
確認の一問一答
営業所と車庫を電話でつないで運転者と会話し、酒気帯びの有無等を確認した。これは遠隔点呼を実施したことになるか。
なりません。遠隔点呼は、対面による点呼と同等の効果を有するものとして定められた方法であり、要件を満たす機器・システムと所定の手続を前提とします。電話その他の方法によることができるのは、遠隔地で業務を開始・終了するため対面で行えないなど、運行上やむを得ない場合に限られます。
自動点呼は、運行管理者または補助者が画面越しに立ち会って行う点呼である。○か×か。
×。画面越しに立ち会って行うのは遠隔点呼です。自動点呼は、認定を受けた機器・システムを用い、あらかじめ入力された点呼予定に基づいて、運行管理者等の立会いなしに実施される仕組みです。
要件を満たす機器を導入すれば、届出をしなくても遠隔点呼を開始してよい。○か×か。
×。実施にあたっては所定の届出が必要とされています。手続を欠いたまま運用すると、対面でも「大臣が定める方法」でもない点呼となり、未実施と評価されるおそれがあります。