CHAPTER 1 ── 1-08
補助者と「3分の1ルール」
点呼を運行管理者一人で回し切れる会社は、実はほとんどありません。早朝の出庫、深夜の帰庫、休日の運行。そこを支えるのが補助者の制度です。ただし補助者は運行管理者の代わりではなく、任せられる範囲には線が引かれています。その線のいちばん有名なものが、点呼の「3分の1ルール」です。
SECTION 1試験ではこう問われる
誰が選び、何ができて、どこからができないか
補助者の論点は三つの問いに分解できます。誰が選任するのか——事業者です(1-18の切り分けどおり、選任は「体制を作る」側の仕事)。運行管理者は選任について助言する立場です。誰がなれるのか——運行管理者資格者証を持つ者、または基礎講習を修了した者です。無資格の事務員をそのまま補助者にすることはできません。何ができるのか——運行管理者の業務の補助。代表が点呼で、ここに3分の1ルールがかかります。
| 論点 | 結論 |
|---|---|
| 選任するのは | 事業者(運行管理者ではない) |
| なれるのは | 運行管理者資格者証の保有者、または基礎講習の修了者 |
| 選任の届出 | 不要(運行管理者の選任届〔遅滞なく〕と混同しない) |
| 点呼の分担 | 補助者に行わせることができる。ただし総回数の3分の1以上は運行管理者自身が行う |
| 判断が必要な場面 | 酒気帯び等を認めたら、補助者は直ちに運行管理者に報告し、その指示にもとづき措置する |
3分の1の数え方は「点呼の総回数」に対する割合です。たとえばある月の点呼が乗務前・乗務後あわせて300回なら、少なくとも100回は運行管理者自身が行っている必要があります。運転者ごとでも日ごとでもなく、営業所の総回数で見る——ここまで含めて覚えてください。
事業者は、運行管理者資格者証を有する者又は国土交通大臣が認定する基礎講習を修了した者のうちから、運行管理者の業務を補助させるための者(補助者)を選任することができる。補助者に点呼の一部を行わせる場合であっても、点呼の総回数の少なくとも3分の1以上は運行管理者が行わなければならない。補助者は、点呼の結果、運転者が酒気を帯びていることその他の事由を確認した場合には、直ちに運行管理者に報告し、運行管理者の指示にもとづき、当該運転者を乗務させない等の措置を講じなければならない。
試験のひっかけは、この表の各行をそのまま裏返した形で出ます。「補助者は運行管理者が選任する」——誤り、事業者です。「点呼はすべて補助者に行わせることができる」——誤り、3分の1以上は運行管理者です。「3分の2以上は運行管理者が」——数字の入れ替え、正しくは3分の1以上。「補助者が酒気帯びを確認したときは、自らの判断で乗務を禁止しなければならない」——誤り、直ちに運行管理者に報告し、指示を受けて措置します。補助者は判断の主体ではなく、判断を運行管理者につなぐ役です。
SECTION 2現場ではこう現れる
補助者は、社長兼務の会社の持続性を支える制度です
社長が運行管理者を兼ね、朝4時の点呼から夜の帰庫まで一人で見ている——熊本の小規模事業者では珍しくない姿ですが、この体制は社長が休んだ日、入院した日に点呼ごと止まります。補助者の選任は、法令対応であると同時に、会社の運行を一人の体調から切り離す仕組みです。奥様や配車担当の方に基礎講習(3日間)を受けてもらい、補助者として朝番・夜番を分担する。これが最小の解になります。
選任の実務は、講習・任命・規程の三点です
補助者の選任に運輸支局への届出は要りません(運行管理者の選任届とここが違います)。ただし、届出が要らないからこそ社内の形が問われます。基礎講習の修了証、選任した旨の社内文書(任命書)、そして運行管理規程への補助者の位置づけの記載。巡回指導で「この方はどなたの資格で点呼を?」と聞かれたとき、この三点が出せれば足ります。
- ✓基礎講習の修了証(または運行管理者資格者証)の写し資格
- ✓選任した旨の社内文書(任命書)任命
- ✓運行管理規程への補助者の位置づけの記載規程
- □朝番・夜番の分担表(誰がどの時間帯の点呼を行うか)分担
- □点呼記録簿の実施者欄を、月次で集計している3分の1
- ■基礎講習を受けていない事務員が点呼をしていないか要確認
巡回指導で「この方はどなたの資格で点呼を?」と聞かれたとき、上の三点が出せれば足ります。最後の一行が、善意で回している現場ほど起きやすい落とし穴です。
3分の1は、点呼記録簿の実施者欄で数えます
1-05で「実施者名を必ず書く」とお伝えした理由がここです。3分の1以上を運行管理者が行っている事実は、点呼記録簿の実施者欄を月次で集計して初めて示せます。実施者欄が空欄だらけの記録簿は、ルールを守っていても守っている証明ができません。顧問先では毎月の訪問時に、この集計を機械的に確認しています。
SECTION 3崩れると、何が起きるか
無資格の点呼は、「点呼をしていない」と同じ扱いです
最も重いのは、補助者に選任されていない(基礎講習を受けていない)事務員が日常的に点呼を行っているケースです。本人たちは真面目に点呼をしているつもりでも、制度上は実施者の資格を欠く点呼であり、点呼未実施として扱われるリスクがあります。善意で回している現場ほど起きやすい落とし穴です。次に多いのが3分の1割れ——補助者に頼り切り、運行管理者自身の実施が総回数の3分の1を下回っている状態。どちらも、直し方は同じです。基礎講習の受講を予約し、選任の形式を整え、実施者欄を正しくつけ始める。過去に遡って取り繕う方法はありません(1-05の注意ボックスと同じ原則です)。
確認の一問一答
補助者は、運行管理者が選任しなければならない。○か×か。
×。補助者を選任するのは事業者です。運行管理者は選任に関して助言を行う立場です。
補助者に点呼を行わせる場合、点呼の総回数の少なくとも3分の1以上は運行管理者が行わなければならない。○か×か。
○。補助者に点呼の一部を任せることはできますが、総回数の3分の1以上は運行管理者自身が行う必要があります。
補助者が点呼で運転者の酒気帯びを確認した場合、補助者は自らの判断で当該運転者の乗務を禁止する。○か×か。
×。補助者は直ちに運行管理者に報告し、運行管理者の指示にもとづいて、乗務させない等の措置を講じます。判断の主体は運行管理者です。