CHAPTER 1 ── 1-07
アルコール検知器
— 「常時有効に保持する」とは、何をすることか
アルコール検知器は、買って営業所に置けば義務を果たしたことになる機器ではありません。規則が事業者に求めているのは、備えること、常時有効に保持すること、そして点呼で使うことの三つです。とりわけ二つ目の「常時有効に保持」は、日々の確認作業を指しています。試験で問われるのもここ、巡回指導で確認されるのもここです。
SECTION 1試験ではこう問われる
備える・保つ・使う。この三つが並んで一つの義務になっています
条文の構造はきわめて素直です。検知器を営業所ごとに備え、常時有効に保持し、点呼で酒気帯びの有無を確認するときに用いる。三つのうちどれが欠けても義務を果たしたことになりません。設問は、この三つのどれか一つを抜いたり、条件をすり替えたりして作られます。
| 求められること | 内容 |
|---|---|
| 備える | 営業所ごとに備える。会社に1台ではなく、営業所の単位で必要になる |
| 常時有効に保持する | 正常に作動し、故障のない状態を保つこと。毎日の確認(電源が確実に入るか、損傷がないか)と、少なくとも週1回の作動確認(酒気を帯びていない者が使用して検知しないこと、アルコールを含む液体等を用いて検知すること)が示されています |
| 使用する | 点呼で酒気帯びの有無を確認する際に、目視等による確認に加えて用いる。乗務前・乗務後、中間点呼のいずれでも同じ |
| 検知されたとき | 数値の大小にかかわらず乗務させない。道路交通法の酒気帯び運転の基準値とは別の話 |
貨物自動車運送事業者は、アルコール検知器(呼気に含まれるアルコールを検知する機器であって、国土交通大臣が告示で定めるものをいう。)を営業所ごとに備え、常時有効に保持するとともに、酒気帯びの有無について確認を行う場合には、当該アルコール検知器を用いて行わなければならない。
「常時有効に保持」とは、正常に作動し、故障がない状態で保持しておくことをいう。このため、アルコール検知器の使用者は、少なくとも毎日、① アルコール検知器の電源が確実に入ること、② アルコール検知器に損傷がないこと、を確認すること。また、少なくとも週1回以上、③ 確実に酒気を帯びていない者が当該アルコール検知器を使用した場合に、アルコールを検知しないこと、④ 洗口液、液体歯磨き等アルコールを含有する液体又はこれを希釈したものを、スプレー等により口内に噴霧した上で、当該アルコール検知器を使用した場合に、アルコールを検知すること、を確認すること。
「毎日」と「少なくとも週1回」という二段の頻度は、規則本文ではなく、この解釈通達に書かれています。条文だけを読んでいると出てこない数字ですから、根拠を聞かれたときに通達の名前が出てくるかどうかで、説明の説得力が変わります。
ひっかけの型は三つあります。第一に基準値のすり替え。「検知されたが、道路交通法上の酒気帯び運転の基準値未満であったため乗務させた」——誤りです。事業者の点呼で問われるのは酒気を帯びているかどうかであって、道路交通法の基準を下回れば乗務させてよい、という構成にはなっていません。
第二に設置単位。「本社に備えていれば、他の営業所に備える必要はない」——誤り。営業所ごとです。第三に保持の意味。「常時有効に保持とは、いつでも使えるように電源を入れておくことをいう」といった説明が出たら疑ってください。求められているのは、正常に作動する状態を確認しながら保つことです。覚え方は「備える・保つ・使う」の三語で足ります。
SECTION 2現場ではこう現れる
「点検している」ことは、点検の記録がなければ伝わりません
巡回指導で検知器の話になると、たいてい同じやりとりになります。「点検はされていますか」「毎朝、電源は入れています」「その記録はありますか」「……特には」。ここで止まってしまう会社が多い。実際に確認していても、記録がなければ確認していない場合と区別がつきません。点呼記録簿と同じ構造の問題です。
紙一枚で足ります
検知器の横に、日付・確認した人・電源/損傷の確認・作動確認(週1回以上)の欄を並べた紙を一枚置く。それだけで「常時有効に保持」の説明はつきます。様式に決まりはありませんから、A4に手書きの罫線で構いません。むしろ、続けられる形であることのほうが重要です。当事務所の帳票点検では、点呼記録簿と一緒にこの一枚があるかどうかを最初に見ています。
- ✓日付/確認した人の氏名毎日
- ✓電源が確実に入る毎日
- ✓本体・マウスピースに損傷がない毎日
- ✓酒気を帯びていない者が使用し、検知しないこと週1回
- ✓アルコールを含む液体等を用いて、検知すること週1回
- □センサーの交換・校正の期限(購入時に控える)年1回
この紙を検知器の横に置くだけで、「常時有効に保持」の説明はつきます。予備機を1台持っておくと、故障した日に正直に書ける状態が保てます。
センサーには寿命があります
アルコール検知器のセンサーは、使用回数や使用期間に応じて精度が落ちていきます。メーカーが交換や校正の目安を定めていますので、購入時にその期限を控え、更新の予定を年間の計画に入れておくことをお勧めします。「壊れてはいないが、いつ買ったか分からない」検知器は、有効に保持していると説明しにくい状態です。
直行直帰・早朝出庫のときの持たせ方
遠隔地で運行を開始または終了するために対面で点呼ができない場合には、営業所の検知器を使えません。この場合は、運転者に携行型の検知器を持たせるか、事業用自動車に備えられた検知器を用いる形になります。運用として決めておくべきなのは、機器の割り当てと、測定結果をどう営業所に伝えるか(通話で数値を読み上げる、写真で送る等)、そして誰がそれを記録簿に記入するかです。点呼の方法に関する制度は改正が続いている分野ですので、遠隔点呼や業務後自動点呼の要件は最新の告示でご確認ください。
検知されたときの手順を、先に決めておく
実際に検知されたとき、その場で困るのは「代わりに誰が運ぶか」です。運行の差し替え、荷主への連絡、本人への対応、記録への記載——この順番を決めていない会社では、判断に時間がかかり、結果として「とりあえず出発させた」という最悪の選択が起きます。年に一度あるかないかの事態ほど、紙に書いておく価値があります。
SECTION 3不備だと、何が起きるか
機器の不備は、酒気帯び確認そのものの不備として見られます
検知器が備えられていない、故障したまま置かれている、点検の記録がない。これらは機器の管理の問題にとどまらず、点呼における酒気帯びの確認が適正に行われていない状態として扱われます。点呼は輸送の安全の入口であり、その入口で使う機器が有効でなければ、確認の結果そのものが裏づけを失うためです。巡回指導では帳票と現物の両方が見られますので、記録簿だけを整えても、機器の側で説明が止まります。
そして、酒気帯びの確認を欠いたまま飲酒運転による事故が起きた場合、会社が受ける行政上の処分と、荷主・地域社会に対して負うことになる結果は、日々の確認作業の手間とは比較になりません。検知器の点検は、一日一分で終わる作業です。
検知器が故障していた期間について、点呼記録簿に「使用した」「0.00」と書いておく——これは不備の解消ではなく、事実と異なる記録を作る行為です。故障していたなら、その事実と、その間にどう確認したか(予備機の使用、目視等による確認の内容)を記録に残します。予備機を1台持っておくと、この場面で正直に書ける状態が保てます。
確認の一問一答
乗務前点呼でアルコールが検知されたが、道路交通法に定める酒気帯び運転の基準値を下回っていたので、注意したうえで乗務させた。この扱いは適切か。
不適切です。点呼で確認するのは酒気帯びの有無であり、道路交通法の基準値を下回れば乗務させてよいという扱いにはなっていません。検知された場合は乗務させないという運用が前提です。
「アルコール検知器を常時有効に保持する」とは、具体的にどのような状態を保つことか。
正常に作動し、故障がない状態を保つことです。毎日、電源が確実に入ること・損傷がないことを確認し、少なくとも週1回以上、酒気を帯びていない者が使用してアルコールを検知しないこと、アルコールを含む液体等を用いて使用して検知することを確認する、という考え方が示されています。
アルコール検知器は営業所に備えたものを用いなければならず、それ以外の機器を使用することは認められない。○か×か。
×。遠隔地で業務を開始または終了するため対面で点呼ができない場合には、運転者に携行させた検知器や、事業用自動車に備えられた検知器を用いることになります。営業所ごとに備える義務と、その場で用いる機器の話は別です。