CHAPTER 1 ── 1-11
業務記録(運転日報)
— 走った記録から、待たされた記録へ
現場で「運転日報」と呼ばれている帳票が、規則の上では業務記録です。長く、走行の記録——どこからどこまで、何キロ——が中心の帳票でしたが、荷待ち時間と荷役作業の記録が加わり、令和7年4月からはその対象が全車両に広がりました。過労防止の資料であると同時に、荷主と運賃・料金を話すときの唯一の客観的な材料でもあります。書かせ方を決めるのは、いまがちょうどいい時期です。
SECTION 1試験ではこう問われる
記録するのは「誰が・どの車で・どこを・どれだけ」と、待った時間
業務記録は、運転者等ごとに記録させ、その記録を一年間保存します。記載事項は多いのですが、順番に並べると自然な流れになっていて、丸暗記の必要はありません。
| 記載事項 | 内容 |
|---|---|
| 誰が・どの車で | 運転者等の氏名/自動車登録番号その他その車を識別できる表示 |
| どこを・どれだけ | 業務の開始・終了の地点及び日時、主な経過地点、業務に従事した距離 |
| 交替したとき | 業務を交替した場合の地点及び日時 |
| 休んだとき | 休憩又は睡眠をした場合の地点及び日時 |
| 積載の状況 | 車両総重量8トン以上又は最大積載量5トン以上の普通自動車である事業用自動車の業務に従事した場合の貨物の積載状況 |
| 待たされたとき | 荷主の都合により集貨地点等で待機した場合:集貨地点等、荷主から到着日時を指定された場合はその日時、実際に到着した日時、積込み・取卸しの開始と終了の日時、附帯業務の開始と終了の日時、出発した日時。規則に時間の条件はなく、待機時間が30分未満のときは記録を省略して差し支えないとされているのは通達の運用です |
| 荷役をしたとき | 荷役作業等を実施した場合:その内容と要した時間等。ただし荷主との契約書に実施した荷役作業等の全てが明記されている場合は、要した時間が1時間以上である場合に限られます |
| 異常があったとき | 事故または著しい運行の遅延その他の異常な状態が発生した場合の、その概要及び原因 |
貨物自動車運送事業者は、事業用自動車に係る運転者等の業務について、当該業務を行った運転者等ごとに、氏名、事業用自動車を識別できる表示、業務の開始及び終了の地点及び日時並びに主な経過地点及び業務に従事した距離、業務を交替した場合の地点及び日時、休憩又は睡眠をした場合の地点及び日時、貨物の積載状況、荷主の都合により待機した場合の集貨地点等および到着・出発等の日時、荷役作業等を実施した場合の内容および要した時間、事故その他の異常な状態が発生した場合の概要及び原因等を記録させ、かつ、その記録を一年間保存しなければならない。
第1項第7号の「荷主の都合により待機した場合」とは、事業者としての運行計画又は運行指示によらず、荷主の指示等により待機した場合をいう。集貨地点等における到着日時から出発日時までの時間のうち、荷積み・荷卸し、附帯作業等の業務及び休憩に係る時間を控除した時間(待機時間)が30分未満の場合は、記録を省略して差し支えない。
ここは注意して読むところです。「30分」は規則の条文には出てきません。規則が求めているのは「荷主の都合により待機した場合」の記録で、時間の下限は書かれていません。30分未満なら省略してよい、というのは解釈通達に置かれた運用です。逆に言えば、根拠を聞かれて「30分以上と決まっているので」と答えると、条文を開いたときに説明が合わなくなります。
もう一つ、「荷主の都合により」という限定も見落とされます。自社の運行計画の組み方で生じた待機は、この号の対象ではありません。荷主の指示による待機かどうかが分かれ目で、だからこそ「到着日時を荷主から指定された場合は、その日時」が記載事項に入っています。指定時刻と実際の到着時刻と出発時刻——この三つが並んで初めて、待機が誰の都合だったのかが読み取れる仕組みです。
ひっかけの型は三つです。第一に保存年限。業務記録は一年間で、三年ではありません(保存年限は帳票ごとに違います。1-10で一覧にしています)。第二に対象車両。「車両総重量8トン未満の車両については、荷待ち時間を記録する必要はない」——令和7年4月1日から、荷待ち時間・荷役作業等の記録の対象は全車両に拡大されています。8トン・5トンの数字が残っているのは貨物の積載状況のほうだ、と区別してください。第三に「した場合」の読み落とし。休憩、交替、待機、荷役、異常はいずれも発生したときに記録する事項です。
SECTION 2現場ではこう現れる
市販の日報に、待った時間を書く欄がありますか
ご相談を受けて日報を拝見すると、走行距離と発着時刻はきれいに埋まっているのに、荷待ちと荷役の欄がそもそも存在しない、という様式にしばしば出会います。以前の様式のまま使い続けているためです。まずここを直さないと、運転者に「書いてくれ」と言っても書きようがありません。
「到着」と「出発」を必ず書かせる。それだけで30分は測れます
荷待ち時間の記録でつまずくのは、「30分以上かどうか」を運転者に判断させようとするからです。判断させず、集貨地点に到着した時刻と出発した時刻を必ず書く運用にすれば、30分以上かどうかは後から分かります。指定された到着日時があればそれも書く。この三つの時刻が並んでいる日報は、それだけで荷主との話し合いの材料になります。
- ✓集貨地点等◯◯物流センター
- ✓荷主から指定された到着日時10:00
- ✓到着した日時09:40
- ✓積込みの開始・終了の日時11:20 → 11:50
- ✓附帯業務の開始・終了の日時なし
- ✓出発した日時12:00
30分以上かどうかを運転者に判断させないこと。到着と出発の時刻さえ必ず書かせれば、待機時間は後から測れます。この例では待機1時間40分。
これは、運賃・料金の交渉の材料でもあります
「あの荷主のところはいつも待たされる」という感覚は、社内では共有されていても、外には出せません。記録が残っていて初めて、「先月、御社での待機は延べ何時間でした」という話ができます。待機時間料や荷役作業の料金を運賃と分けて請求できるかどうかは、この記録があるかどうかで決まります(1-03)。義務として書かされている帳票が、値決めの材料に変わる。業務記録は、その転換がいちばん起きやすい帳票です。
デジタコ・アプリと手書きの分担
運行記録計やアプリを使っている会社では、走行の記録は自動で残ります。一方、荷待ちの理由、荷主の確認の有無、附帯業務の内容といった「人が書かないと残らない情報」は手書きの欄に残ります。両方を合わせて一つの業務記録として説明できる形になっているか——導入している会社ほど、ここが分かれていて、巡回指導のときに探し回ることになりがちです。当事務所の帳票点検では、直近3か月分から数日を抜き取り、点呼記録簿と日報を突き合わせて見ています。
SECTION 3不備だと、何が起きるか
日報は、他の帳票と突き合わされます
業務記録が単独で見られることは、まずありません。点呼記録簿の点呼時刻、運行記録計の記録、そして拘束時間の管理表。これらと並べて矛盾がないかが確認されます。点呼は5時なのに日報の出庫は4時、日報上は9時間の運行なのに運行記録計では12時間——こうした食い違いは、どちらかが事実でないことを意味しますから、記録全体の信頼性が問われます。
記録の欠落そのものも指摘の対象ですが、より実質的に効くのは、長時間労働の実態を説明できなくなることです。荷待ちが常態化している場合、その時間が記録に残っていれば「荷主側の事情」として説明でき、是正を求める土台にもなります。記録がなければ、外から見えるのは自社の運転者の拘束時間の長さだけです。記録は、自社を守る側にも働きます。
月末に一週間分をまとめて思い出しながら書く、運行記録計の記録から逆算して日報を作る——これは記録の作成ではなく、実態と異なる書類を作る行為です。抜けている日は抜けているものとして、翌日から書ける形に様式と運用を直す。書けない様式のまま「書け」と言い続けると、まとめ書きが常態化します。直すべきは、たいてい人ではなく紙のほうです。
確認の一問一答
業務記録は、その記録を三年間保存しなければならない。○か×か。
×。一年間です。保存年限は帳票ごとに異なりますので、まとめて覚えるのが早道です(1-10)。
車両総重量が8トン未満で最大積載量も5トン未満の事業用自動車については、荷主の都合による待機時間を業務記録に記録する必要はない。○か×か。
×。荷待ち時間および荷役作業等の記録の対象は、令和7年4月1日から全車両に拡大されています。8トン以上・5トン以上という要件が残っているのは、貨物の積載状況の記録です。
荷役作業等を実施した場合、業務記録への記録が必要となるのはどのようなときか。
荷役作業等を実施した場合が対象です。ただし、荷主との契約書に実施した荷役作業等の全てが明記されている場合には、要した時間が1時間以上である場合に限られます。契約書に書ききれていない作業をしたときは、時間の長短にかかわらず記録が要る、という向きの規定です。