CHAPTER 1 ── 1-13
運行指示書
— 中間点呼と、同じ引き金で発生する帳票
運行指示書は、毎日の帳票ではありません。乗務前と乗務後のどちらも対面で点呼ができない乗務を含む運行——いわゆる2泊3日以上の運行——が入ったときにだけ発生します。たまにしか使わない帳票は、いちばん忘れられます。しかも、それが必要になる運行かどうかは、中間点呼が必要かどうかとまったく同じ条件で決まります。二つをひとつの引き金として覚えておくのが、実務でも試験でも確実です。
SECTION 1試験ではこう問われる
引き金は「乗務前・乗務後のいずれも対面で点呼できない乗務」
泊数で覚えると速い分野ですが、条件そのものは泊数ではありません。乗務前と乗務後のどちらの点呼も対面で行えない乗務が、その運行に含まれるかどうかです。日帰りなら出庫時と帰庫時に対面できます。1泊2日でも、出発の日の乗務前と、帰る日の乗務後は営業所で対面できます。2泊3日になると、中日の乗務は前も後も営業所にいません。ここで、中間点呼と運行指示書が同時に発生します。
| 運行の形 | 中間点呼 | 運行指示書 |
|---|---|---|
| 日帰り | 不要(乗務前・乗務後とも対面) | 不要 |
| 1泊2日 | 不要 | 不要 |
| 2泊3日以上 | 必要(少なくとも1回) | 必要(作成・写しの携行・指示) |
覚え方は一行です。「対面できない点呼が“両端”に来る乗務があれば、中間点呼と運行指示書」。片方だけ問われる設問が多いのですが、成立条件は共通です。
一般貨物自動車運送事業者等は、乗務前及び乗務後の点呼のいずれも対面等で行うことができない乗務を含む運行ごとに、運行の開始及び終了の地点及び日時、乗務員等の氏名、運行の経路並びに主な経過地における発車及び到着の日時、運行に際して注意を要する箇所の位置、休憩地点及び休憩時間、運転又は業務の交替の地点その他運行の安全を確保するために必要な事項を記載した運行指示書を作成し、これにより運転者等に対し適切な指示を行うとともに、その写しを運転者等に携行させなければならない。運行指示書の記載事項に変更が生じた場合には、運行指示書および運転者等が携行する写しの両方にその内容を記載し、電話その他の方法により運転者等に対し適切な指示を行う。運行の途中において運行指示書の作成を要することとなった場合には、当該乗務以後の運行について運行指示書を作成し、電話その他の方法により指示を行うとともに、その内容を運行指示書に記載する。運行指示書およびその写しは、運行の終了の日から一年間保存しなければならない。
ひっかけの型は三つです。第一に泊数のずらし。「1泊2日の運行を行う場合には、運行指示書を作成しなければならない」——原則として誤りです。第二に変更の扱い。「経路の変更を電話で指示したので、営業所に保管している運行指示書に記載した」——これだけでは足りません。運転者が携行している写しにも記載させます。正本と写しの両方が同じ内容になっていることが求められます。第三に保存の起算日。作成した日からではなく、運行の終了の日から一年間です。
SECTION 2現場ではこう現れる
年に数回の帳票だから、雛形と「作るきっかけ」を決めておく
車両20両以下の会社で、2泊3日以上の運行が毎週あるという例はそう多くありません。多いのは、普段は日帰りと1泊で回っていて、年に何度か関東や関西への長距離が入る、という形です。この「たまに」が曲者で、必要なときにだけ思い出さなければならない帳票になります。
作るタイミングは、配車を決めたとき
運行指示書は、出発の朝に慌てて書くものではありません。経路、主な経過地の発着時刻、休憩地点と休憩時間、交替の地点、注意を要する箇所——これらは配車を決める段階で考えていることです。受注して配車が決まった時点で一枚作り、印刷して1部を運転者に渡す。この流れにしておけば、点呼の場で渡すだけになります。様式は決まった書式が公表されていますので、自社用に一枚テンプレートを作っておけば足ります。
- □運行の開始及び終了の地点及び日時発着
- □乗務員等の氏名氏名
- □運行の経路、主な経過地における発車及び到着の日時経路
- □運行に際して注意を要する箇所の位置注意
- □休憩地点及び休憩時間(休憩がある場合)休憩
- □運転又は業務の交替の地点(交替がある場合)交替
- ■写しを運転者に渡した/変更時は両方に記載する、と伝えた携行
年に数回しか使わない帳票です。テンプレートを一枚作り、「配車が決まったら作る」を手順に固定しておくと、次から抜けません。
いちばん抜けるのは、変更したときの記載
荷主の都合で翌日の積地が変わった、渋滞で経過地の時刻が大きくずれた、フェリーの便が変わった。電話で指示すること自体は、どの会社もやっています。抜けるのは、その内容を紙に残すところです。営業所側では正本に記入し、運転者には携行している写しに書き込むよう伝える。「電話のあと、赤ペンで書いておいてください」と一言添える運用にしている会社は、この指摘を受けません。
運行の途中で必要になった場合
当初は1泊2日の予定だったが、荷主の都合で帰りが1日延びた——という場面もあります。この場合は、以後の運行について運行指示書を作成し、電話その他の方法で運転者に指示したうえで、その内容を運行指示書に記載します。運転者は写しを持っていませんから、営業所側の記録で運行の実態を説明できる形にしておくことになります。
SECTION 3不備だと、何が起きるか
泊まり運行があったことは、他の帳票から分かります
「2泊3日以上の運行があるのに、運行指示書がない」は、巡回指導での定番の指摘です。そして、泊まり運行があったかどうかは、業務記録(日報)と運行記録計を見れば分かります。帳票を隠すことはできない、という前提で考えたほうが早い。多くの場合、中間点呼の未実施と同時に指摘されます。同じ引き金で発生する義務だからです。
安全の面でも、この帳票には実質があります。長距離・泊まりの運行は、休憩をどこで取るか、どこが危険かをあらかじめ決めておかないと、現場の判断が運転者一人に委ねられます。指示書は、会社が運行の設計を引き受けた証拠でもあります。何かが起きたときに、「運転者に任せていた」と「会社が経路と休憩を設計していた」の差は小さくありません。
過去の泊まり運行について、日報を見ながら運行指示書を後から作って綴じておく——これは不備の解消ではなく、実際には行われなかった指示を行ったことにする行為です。抜けている運行は抜けているものとして、次の泊まり運行から確実に作成する。テンプレートと「配車が決まったら作る」という手順を先に用意しておけば、次からは抜けません。
確認の一問一答
1泊2日の運行を行う場合には、運行指示書を作成し、その写しを運転者に携行させなければならない。○か×か。
×。作成が必要となるのは、乗務前及び乗務後の点呼のいずれも対面等で行うことができない乗務を含む運行です。1泊2日は、出発時の乗務前点呼と帰庫時の乗務後点呼を対面で行えるため、原則として作成は必要ありません(同じ条件で、中間点呼も必要になりません)。
運行の途中で経路に変更が生じたため、電話で運転者に指示し、営業所に保管している運行指示書に変更内容を記載した。これで足りるか。
足りません。運転者が携行している運行指示書の写しにも、変更の内容を記載させる必要があります。正本と写しの両方が同じ内容になっている状態が求められます。
運行指示書およびその写しの保存期間は、作成した日から一年間である。○か×か。
×。運行の終了の日から一年間です。起算日が問われる設問が出ますので、「終了の日から」と覚えてください。