CHAPTER 1 ── 1-21
特別な指導と適性診断
— 初任・高齢・事故惹起
全員向けの年間教育(1-20)とは別に、特定の運転者にだけ発生する義務があります。初めて乗る人、65歳を迎えた人、事故を起こした人。この三者には「特別な指導」と「適性診断」が対で課され、試験は時間数と時期の数字を、巡回指導は記録の有無を見てきます。対で、数字ごと覚えるのが正解です。
SECTION 1試験ではこう問われる
三者三様。指導と診断を、対の表で持つ
対象者は三類型。それぞれに「特別な指導」(教育)と「適性診断」(外部機関での診断)が対になっています。まず全体を一枚で。
| 対象者 | 特別な指導 | 適性診断 |
|---|---|---|
| 初任運転者 | 座学15時間以上+安全運転の実技20時間以上。初めて乗務する前に実施(やむを得ない場合は乗務開始後1か月以内) | 初任診断。初めて乗務する前(やむを得ない場合は乗務開始後1か月以内) |
| 高齢運転者 | 適齢診断の結果が判明した後1か月以内に、結果を踏まえて個別に指導 | 適齢診断。65歳に達した日以後1年以内に1回、その後3年以内ごとに1回 |
| 事故惹起運転者 | 座学6時間以上(安全運転の実技は可能な限り実施)。事故後、再び乗務する前に実施(やむを得ない場合は乗務開始後1か月以内) | 特定診断Ⅰ:死者または重傷者を生じた事故を起こし、事故前1年間に事故なしの者 特定診断Ⅱ:事故前1年間にも事故ありの者 |
覚える数字は五つに集約できます。15・20・6・65・3。初任の座学15時間と実技20時間、事故惹起の座学6時間、適齢の65歳、そして3年以内ごと。時期の原則は三者とも「乗務の前」で、やむを得ない場合の逃げ道が「1か月以内」——この対称性ごと覚えると崩れません。
試験のひっかけは三方向です。第一に時間数の入れ替え——「初任運転者に対する特別な指導は座学6時間以上」は誤り(6時間は事故惹起者)。第二に時期——「適齢診断は65歳に達した日以後3年以内に受診させる」は誤り(最初は1年以内、その後が3年以内ごと)。第三に特定診断ⅠとⅡの区別——分かれ目は事故の重さではなく、事故前1年間に事故を起こしていたかどうかです。ここを「死者ならⅡ」のように重さで覚えると確実に間違えます。
事業者は、死者又は負傷者を生じた事故を引き起こした者、運転者として新たに雇い入れた者、高齢運転者(65歳以上)に対して、国土交通大臣が告示で定めるところにより、特別な指導を行い、適性診断であって国土交通大臣の認定を受けたものを受けさせなければならない。指導の記録は3年間保存する。
SECTION 2現場ではこう現れる
採用のたびに、35時間の教育義務が発生しています
この条文が現場で最も重いのは、初任運転者です。座学15時間+実技20時間——つまり採用のたびに合計35時間以上の教育が、乗務開始の前に(やむを得ない場合でも1か月以内に)必要になります。人手不足で「明日から乗ってほしい」が本音の現場と、35時間の建前。ここの折り合いを付けずに採用を続けている会社が、巡回指導で最も定番の指摘を受けます。
現実的な回し方は、様式と分担です
座学15時間は、国の指針が定める項目に沿ったカリキュラム表を一度作ってしまえば、以後は同じ様式で回せます。トラック協会の教材や外部講習を組み合わせれば、社内で全部を抱える必要もありません。実技20時間は、ベテラン運転者の添乗指導を記録に残す形が小規模の会社の標準解です。日付・時間・路線・指導者・内容を記した実施記録——これが3年保存の対象で、巡回指導で開かれる紙です。
- 1採用が決まった日 ── 初任診断を予約し、35時間の指導の日程を組む初任
- 265歳の誕生日が近づいた日 ── 適齢診断を予約する高齢
- 3事故が起きた日 ── 特定診断(Ⅰ/Ⅱ)を予約する事故惹起
- ✓座学のカリキュラム表(指針の項目に沿って一度作る)様式
- ✓実技の実施記録(日付・時間・路線・指導者・内容)3年保存
- ✓65歳到達者と診断期限の一覧(年間カレンダー)管理
地方では診断の予約が数週間先になることも珍しくありません。予約を先に入れておけば、「1か月以内」の期限に追われずに済みます。
診断は予約が先、乗務が後
初任診断・適齢診断・特定診断は、NASVA(自動車事故対策機構)等の認定機関で受けます。地方では予約が数週間先になることも珍しくないので、採用が決まった日・65歳の誕生日が近づいた日・事故が起きた日に、まず診断の予約を入れる——この順番を社内の決まりにしておくと、「1か月以内」の期限に追われずに済みます。65歳到達者と診断期限の管理は、まさに年間カレンダー管理(顧問の連絡型に含まれる仕事)の領域です。
SECTION 3抜けると、何が起きるか
「乗せてから整える」は、この分野では通用しません
初任指導・初任診断の未実施は、採用が続いている会社の巡回指導でほぼ確実に確認される項目です。とりわけ重いのは、事故惹起運転者への特別な指導と特定診断を欠いたまま再乗務させ、その運転者が再び事故を起こした場合です。一件目の事故は不運でも、二件目は「必要な指導と診断を経ずに乗せていた」という会社の判断の問題として扱われます。教育記録の3年保存(1-10)は、この場面で会社を守る唯一の紙でもあります。乗務の前に指導と診断——順番だけは、忙しさを理由に崩さないでください。
確認の一問一答
初任運転者に対する特別な指導は、座学を6時間以上実施しなければならない。○か×か。
×。初任運転者への特別な指導は座学15時間以上+安全運転の実技20時間以上です。座学6時間以上は事故惹起運転者に対する特別な指導です。
適齢診断は、65歳に達した日以後1年以内に1回受診させ、その後は3年以内ごとに1回受診させる。○か×か。
○。最初は65歳到達後1年以内、以後は3年以内ごとです。
死者を生じた事故を起こした運転者は、事故の重大性から、事故前1年間の事故の有無にかかわらず特定診断Ⅱを受診させる。○か×か。
×。ⅠとⅡの分かれ目は事故の重さではなく、事故前1年間に事故を起こしていたかどうかです。前1年間に事故がなければ特定診断Ⅰ、あれば特定診断Ⅱです。