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運行管理の教科書 / 第2章 改善基準告示・労働基準法 / 2-01

CHAPTER 2 ── 2-01

改善基準告示とは何か
— 労働時間の基準が、運送事業の許可にはね返るまで

公開 2026.09.07 内容の確認日 2026.09.07 読了目安 8分
試験 頻出巡回指導 重点第2章 しくみ

改善基準告示は、正式には「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」といいます。厚生労働大臣が出した告示で、労働基準法だけでは守りきれない自動車運転者の拘束時間・休息期間・運転時間を定めたものです。運送業でこの告示が重いのは、労働基準監督署の是正勧告で終わらないからです。国土交通省の告示がこの基準を取り込み、輸送安全規則を通じて事業の監査・処分につながっています。まずこの二本立てを押さえます。

SECTION 1試験ではこう問われる

厚生労働大臣の告示が、国土交通省の告示に取り込まれている

改善基準告示は、労働基準法そのものではありません。正式名称は「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」。平成元年の労働省告示第7号として出され、令和4年12月に改正されて、令和6年4月1日から新しい基準が適用されています。自動車運転者は、荷主の都合や道路の状況で労働時間が長くなりやすい。そこで労働基準法の一般的なものさし(1日8時間・1週40時間)とは別に、拘束時間・休息期間・運転時間という運転者向けの物差しを重ねたものだと考えると、位置づけを間違えません。

試験でも現場でも重いのは、この告示が労働の世界だけで完結しないことです。貨物自動車運送事業輸送安全規則の第3条第4項が、国土交通大臣の告示で定める基準に従って勤務時間と乗務時間を定め、運転者に守らせることを事業者に義務づけています。そしてその国土交通省告示(平成13年国土交通省告示第1365号)が、改善基準告示の内容を取り込んでいます。労働基準監督署の是正勧告と、運輸局の監査・行政処分。同じ違反が二つの窓口に出る——これが運送業における改善基準告示の実像です。

根拠 ── 貨物自動車運送事業輸送安全規則 第3条第4項

貨物自動車運送事業者は、休憩又は睡眠のための時間及び勤務が終了した後の休息のための時間が十分に確保されるように、国土交通大臣が告示で定める基準に従って、運転者の勤務時間及び乗務時間を定め、当該運転者にこれらを遵守させなければならない。

改善基準告示 自動車運転者の労働時間等の改善のための基準 労働基準法のルート 厚生労働大臣の告示。労働基準監督署の 監督指導・是正勧告の対象になる 運送事業法のルート 輸送安全規則 第3条第4項 → 国土交通省 告示第1365号。監査・行政処分の対象になる 一つの運行が、二つの窓口で見られる
図 2-01-1改善基準告示は厚生労働大臣の告示ですが、輸送安全規則を通じて運輸局のルートにもつながっています。設問では「労働基準法の基準だから運輸局の処分には関係しない」といった形で誤りが作られます。

時間外労働の上限規制とは、別のものです

混同されやすいのが、労働基準法の時間外労働の上限規制です。こちらも令和6年4月から自動車運転の業務に適用が始まりました。特別条項付きの36協定を結んだ場合の上限は年960時間で、一般の業種にかかる「月100時間未満」「複数月平均80時間以内」「月45時間超は年6回まで」は自動車運転の業務には適用されません(労働基準法附則第140条)。上限規制は時間外労働の総量の枠、改善基準告示は1日・1か月・1年の拘束時間と休息期間の枠。守るべき枠が二つあり、どちらか一方を満たせばよいという関係ではありません。

2024.04 ── 運送業にかかった二つの枠
 時間外労働の上限規制改善基準告示
根拠労働基準法 第36条・附則第140条厚生労働大臣の告示(平成元年労働省告示第7号/最終改正 令和4年厚生労働省告示第367号)
数えるもの時間外労働の時間数拘束時間・休息期間・運転時間
主な枠年960時間(特別条項付き36協定)1か月284時間・1年3,300時間ほか
見る窓口労働基準監督署労働基準監督署/運輸局(監査)

SECTION 2現場ではこう現れる

監査で出すのは「拘束時間が分かる資料」です

運輸局の監査や巡回指導で、改善基準告示の違反はどう見つかるのか。専用の帳票があるわけではありません。点呼記録簿の点呼時刻、業務記録(運転日報)の出庫・帰庫時刻、運行記録計の記録——すでに備えている帳票から拘束時間を組み立てて確認されます。つまり、改善基準告示への対応は新しい紙を作ることではなく、いまある紙から時間を拾える形にすることから始まります。

ここで詰まる会社は少なくありません。日報に出庫と帰庫の時刻は書いてあるのに、点呼記録簿の点呼時刻とずれている。デジタコの記録は残っているが、月ごとの集計は誰も作っていない。監査の連絡が来てから3か月分をさかのぼって手集計する、という事態がよく起きます。月次で拘束時間を集計する一枚を作っておくかどうかが、平時の負担も監査時の負担も大きく変えます。

拘束時間 月次集計(1人分・様式例)◯年◯月/熊本東営業所
  • ✓当月の拘束時間 合計271時間30分
  • ✓1か月の上限(協定あり)310時間
  • ✓1日15時間を超えた日0日
  • ✓1日14時間を超えた日3日
  • ✓休息期間が9時間未満の日0日
  • ✓年度累計(4月から)1,412時間00分

日報から拾って月末に一枚だけ作る。この形が残っていれば、監査でも荷主との話でも、同じ紙を出せます。年度累計の欄を作っておくと、1年3,300時間の枠が終盤で急に効いてくる事態を避けられます。

荷主との関係が、そのまま数字に出る

拘束時間が長い会社の多くは、運転者が長く走っているのではなく、待たされている時間が長い。荷待ちが2時間あれば、その日の拘束時間は2時間伸びます。改善基準告示への対応が「運行を減らす」だけの話にならないのは、ここに理由があります。業務記録の荷待ち欄(1-11)と拘束時間の集計は、同じ問題を別の角度から見た資料です。荷主と料金の話をするときも、運転者に説明するときも、材料は同じところから出てきます。

SECTION 3不備だと、何が起きるか

労基署の是正勧告が、運輸局に伝わります

改善基準告示の違反が労働基準監督署の監督で確認されると、是正勧告が出ます。これで終わりではありません。労働基準監督機関から地方運輸機関への通報の仕組みがあり、運輸局は通報を端緒として監査に入ります。労働の窓口で始まった話が、事業の許可の窓口に届く——この経路があることが、他業種と決定的に違う点です。

逆の順序もあります。巡回指導や監査で拘束時間の超過が見つかれば、そこから労働時間の問題として扱われます。どちらの入口から入っても、見られる資料は同じ点呼記録簿と日報です。帳票を整えることが、二つの窓口の両方に効く。第1章で扱った点呼と記録の話が、第2章にそのままつながっているのはこのためです。

やってはいけない直し方

拘束時間が上限を超えそうだからと、日報の帰庫時刻だけを早く書き直す。点呼の時刻を実際と変えて記録する。——これは改善ではなく、実態と異なる記録の作成です。運行記録計の記録と突き合わされれば、まず食い違いが出ます。超えてしまった月は超えたものとして残し、翌月の運行計画とダイヤ、荷主との到着時刻の約束を見直す。直すのは紙ではなく、運行のほうです。

確認の一問一答

改善基準告示は厚生労働大臣が定めた告示であるから、これに違反しても貨物自動車運送事業法にもとづく行政処分の対象となることはない。○か×か。

×。貨物自動車運送事業輸送安全規則第3条第4項が、国土交通大臣が告示で定める基準(平成13年国土交通省告示第1365号)に従って勤務時間・乗務時間を定めて遵守させることを事業者に義務づけており、その告示が改善基準告示の内容を取り込んでいます。監査・行政処分の対象になります。

令和6年4月から自動車運転の業務に適用された時間外労働の上限規制について、特別条項付き36協定を結んだ場合の年間の上限時間は何時間か。また、一般の業種に適用される規定のうち、自動車運転の業務に適用されないものを挙げよ。

年960時間です。適用されないのは、「時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満」「同じく2〜6か月平均80時間以内」「時間外労働が月45時間を超えられるのは年6か月まで」の三つです(労働基準法附則第140条)。

改善基準告示は、令和何年何月何日から改正後の基準が適用されているか。

令和6年4月1日です。改正の告示は令和4年12月23日(令和4年厚生労働省告示第367号)に出され、適用までに1年3か月余りの準備期間が置かれました。

根拠自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(平成元年労働省告示第7号/最終改正 令和4年厚生労働省告示第367号、令和6年4月1日適用)/自動車運転者の労働時間等の改善のための基準の一部改正等について(令和4年12月23日 基発1223第3号)/貨物自動車運送事業輸送安全規則 第3条第4項/貨物自動車運送事業の事業用自動車の運転者の勤務時間及び乗務時間に係る基準(平成13年国土交通省告示第1365号)/労働基準法 附則第140条/労働基準監督機関と地方運輸機関との相互通報制度
確認本記事は告示・通達および厚生労働省の公表資料にもとづき作成し、記載の確認日時点の制度を反映しています。改善基準告示の運用は解釈通達とQ&Aで補われており、個別の運行がどの規定にあたるかは事案ごとに判断が必要です。実際の運行計画づくりの際は最新の通達および労働基準監督署・運輸支局の案内をご確認のうえ、個別の判断は必ずご相談ください。

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