CHAPTER 1 ── 1-20
年間の教育計画
— 全員に毎月、三者には特別に
運転者の教育は、二層になっています。全運転者に対して継続的に行う指導及び監督と、特定の運転者——事故を引き起こした者、新たに雇い入れた者、65歳以上の者——に対する特別な指導および適性診断。前者は日々の積み重ね、後者はきっかけが生じたときの対応です。年に一度まとめて行うのが難しい会社ほど、年間の計画を先に立てておくと回りはじめます。
SECTION 1試験ではこう問われる
全運転者への指導監督と、三類型への特別な指導
まず土台にあるのが、全運転者に対する指導及び監督です。主として運行する路線・地域の状況、貨物の正しい積載方法、運転の技術と法令遵守事項。これらについて継続的・計画的に指導し、その日時・場所・内容・指導監督を行った者・受けた者を記録して、営業所で3年間保存します。
貨物自動車運送事業者は、主として運行する路線または地域の状況、貨物の正しい積載方法、その他事業用自動車の運行の安全を確保するために必要な運転に関する技術および法令に定める事項について、運転者に対する適切な指導および監督をしなければならない。この場合においては、その日時、場所および内容ならびに指導および監督を行った者および受けた者を記録し、かつ、その記録を営業所において三年間保存しなければならない。また、死者または負傷者が生じた事故を引き起こした者、運転者として新たに雇い入れた者、高齢者(65歳以上の者)に対しては、国土交通大臣が告示で定めるところにより、特別な指導を行い、かつ、国土交通大臣が認定する適性診断を受けさせなければならない。
ひっかけの型は三つです。第一に保存年限。指導監督の記録は三年です(点呼記録簿・業務記録は一年。1-10)。第二に高齢者の年齢。65歳以上です。第三に記録すべき事項。「内容」だけでなく、日時・場所・実施した者・受けた者まで含みます。受けた者の氏名が残っていない記録は、全員に行ったことの証明になりません。
「指針の12項目」とは、この12です
規則第10条が「告示で定めるところにより」と委ねている先が、指導及び監督の指針です。全運転者に対する一般的な指導監督の内容として、次の12項目が並んでいます。年間計画をどう組むかという話は、結局この12をどう配るかという話です。
| ① | 事業用自動車を運転する場合の心構え | ⑦ | 適切な運行の経路及び当該経路における道路及び交通の状況 |
|---|---|---|---|
| ② | 事業用自動車の運行の安全を確保するために遵守すべき基本的事項 | ⑧ | 危険の予測及び回避並びに緊急時における対応方法 |
| ③ | 事業用自動車の構造上の特性 | ⑨ | 運転者の運転適性に応じた安全運転 |
| ④ | 貨物の正しい積載方法 | ⑩ | 交通事故に関わる運転者の生理的及び心理的要因並びにこれらへの対処方法 |
| ⑤ | 過積載の危険性 | ⑪ | 健康管理の重要性 |
| ⑥ | 危険物を運搬する場合に留意すべき事項 | ⑫ | 安全性の向上を図るための装置を備える事業用自動車の適切な運転方法 |
この一覧は、そのまま年間計画の骨格になります。⑫は近年追加された項目で、衝突被害軽減ブレーキなどの装置を積んだ車を、装置に頼りすぎずに運転させるための指導です。新しい車を入れた年は、この項目を前に持ってくると計画に理由がつきます。
SECTION 2現場ではこう現れる
集められないなら、点呼の場で5分ずつ配る
年に一度、全運転者を集めて2時間の研修を行う——これができる会社は、車両20両以下の規模ではまれです。全員が同じ時間に事務所にいることがないからです。それでも指導監督は継続的に行うものですから、現実的な形は月に一つテーマを決めて、点呼の場で5分から10分ずつ伝えるやり方になります。伝えた日時と相手を記録すれば、それが指導の記録です。
三類型は、それぞれ別のきっかけで発生します
初任運転者は採用のたびに発生します。入社時の手続一覧に、特別な指導と適性診断を一行入れておけば漏れません。高齢運転者は誕生日で発生します。運転者等台帳(1-14)の生年月日から、65歳を迎える方を年度の初めに拾い出しておく。事故惹起運転者は事故のあとです。事故の記録(1-15)に書いた原因と再発防止対策が、そのまま特別な指導の中身になります。三類型それぞれの指導の時間数と適性診断の種類は、1-21で扱います。三つとも、他の帳票から拾える形にしておくのが実務の要点です。
- ✓月ごとのテーマ(指針の項目を12に割る)計画
- ✓実施した日時と場所(点呼の場でも可)日時・場所
- ✓指導及び監督を行った者の氏名実施者
- ✓受けた者の氏名(全運転者に行き渡ったかを確認)受けた者
- ✓使った資料(そのまま綴じる)資料
- ■初任・高齢・事故惹起の特別な指導と適性診断の予定三類型
配っただけ、回覧しただけでは、誰が受けたのかが残りません。受けた者の欄が埋まっていることが、この記録のいちばん大事なところです。
SECTION 3不備だと、何が起きるか
「計画はある、記録がない」がいちばん多い
巡回指導でよく見るのは、年間計画の紙は綴じてあるのに、実施の記録が数か月分しかない、あるいは記録に受けた者の氏名がない、という状態です。計画は、実施され記録されて初めて意味を持ちます。逆に言えば、点呼の場で5分ずつでも続けて、その都度サインをもらっていれば、この項目は説明に困りません。
事故が起きたあとには、もう一つの意味が加わります。同じ内容の事故について、それまでどのような指導を行っていたのかが問われる場面です。記録があれば「指導を行っていたが、なお起きた。だから対策をこう変えた」と説明できます。記録がなければ、教育をしていなかった会社として扱われます。教育の記録は、事故の記録(1-15)と運転者等台帳(1-14)と合わせて、三点セットで見られると考えておくのが安全です。
実施していない月について、資料と出席者の名前だけを後から作る——これは記録の作成ではなく、行われなかった指導を行ったことにする行為です。抜けている月は抜けているものとして、今月から始める。年間計画を作り直し、点呼の場で配れる分量に落として、受けた者の欄にサインをもらうところから始めるのが、結局いちばん早い立て直し方です。
確認の一問一答
運転者に対する指導及び監督の記録は、営業所において一年間保存しなければならない。○か×か。
×。三年間です。点呼記録簿や業務記録の一年、事故の記録の三年と並べて整理してください(1-10)。
特別な指導および適性診断の対象となる運転者を三つ挙げよ。
死者または負傷者が生じた事故を引き起こした者、運転者として新たに雇い入れた者(初任運転者)、高齢者(65歳以上の者)の三つです。
指導及び監督を行った場合、記録しなければならない事項は「実施した内容」だけでよい。○か×か。
×。日時、場所、内容に加えて、指導及び監督を行った者と受けた者を記録します。受けた者の氏名が残っていない記録は、全運転者に行き渡ったことの証明になりません。