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運行管理の教科書 / 第5章 実務上の知識及び能力 / 5-01

CHAPTER 5 ── 5-01

実務上の知識及び能力とは
— 条文を知っていることと、運行が回ることの間

公開 2026.09.08 内容の確認日 2026.09.08 読了目安 8分
試験 頻出第5章 しくみ

第1章から第4章までは、条文の話でした。この章はその先——知っている条文を、実際の運行の上で使えるかを問う分野です。試験でも独立した出題分野になっており、計算問題や事例問題が出ます。ここで扱うのは、運行計画、指導監督、健康管理、車の特性、そして事故を防ぐ手立て。どれも「正解が条文に書いてある」とは限らないものです。

SECTION 1試験ではこう問われる

条文を問う分野と、使い方を問う分野

運行管理者試験の出題分野は、法令の分野といくつかに分かれたうえで、最後に実務上の知識及び能力が置かれています。ここだけは問い方が違います。条文の文言を選ばせるのではなく、運行の条件を示して「この計画は成り立つか」を問う、あるいは事例を示して「運行管理者としてどう対応するのが適切か」を問う形になります。出題数は試験センターの公示でご確認ください。

正誤の根拠が条文だけでは決まらない設問もあります。たとえば「点呼で疲労を訴えた運転者に対する対応として適切なもの」といった問いです。条文は「乗務させてはならない」としか書いていませんから、そこから先は運行管理者の判断になります。この章はその判断の材料を集める章です。

第1章 事業法 許可・帳票・体制 第2章 改善基準・労基法 時間の枠 第3章 車両法 車の状態 第4章 道交法 走っている場面 第5章 実務上の知識及び能力 ── これらを、一つの運行の上で同時に使う 条文が答えを決めるところ 拘束時間の上限、点検の周期、速度の上限 判断が要るところ 今日この人を出すか、この便を受けるか 条文を知っていることは前提。この章は、それを運行の上でどう使うかを扱う
図 5-01-1第1章から第4章までは、それぞれ別の法律の話でした。第5章はそれらが同時に効いている一つの運行を扱います。

設問で問われやすいのは、条文の枠と現場の都合がぶつかる場面です。荷主の指定時刻に間に合わない、代わりの運転者がいない、車が1台使えない。そういう条件のもとで「適切な対応」を選ばせる形になります。枠を超える選択肢は、どれだけもっともらしくても正解になりません——これが一つの目安です。

SECTION 2現場ではこう現れる

運行管理者の一日に、五つの章が並んでいます

朝の点呼で酒気帯びと睡眠不足を確かめるのは第1章と第5章、そのとき使うアルコール検知器の備付けは第1章。運行の指示を出すときに拘束時間を数えるのが第2章、日常点検の報告を受けるのが第3章。走っている間の速度と積載が第4章で、帰ってきたら点呼と日報。一日の中で、五つの章が順番に出てきます。

ここで起きやすいのが、章ごとに担当が分かれてしまうことです。点呼は運行管理者、車検と点検は整備管理者、労働時間は事務。それぞれが自分の範囲を見ているのに、運行全体としては枠を超えている——という状態が生まれます。運行管理者の仕事は、分かれているものを一つの運行として見ることにあります。

運行管理者の一日(決めておく5行)◯年◯月/熊本東営業所
  • ✓① 乗務前点呼(酒気帯び・睡眠不足・日常点検)第1・3・5章
  • ✓② 運行の指示(経路・時刻・休憩の位置)第2・4章
  • ✓③ 中間点呼・連絡(遅れの扱い)第1章
  • ✓④ 乗務後点呼(日報・運行記録計)第1・5章
  • ✓⑤ 月末の集計(拘束時間・運転時間)第2章

この5行を紙にしておくと、運行管理者が交代したときに引き継げます。頭の中にしかない手順は、人が変わった月に必ず抜けます。輸送安全規則第20条に並ぶ業務を、自社の時間割に落とし直す作業だと思ってください(1-18)。

「知っているが、回っていない」という状態

巡回指導や監査で指摘されるのは、多くの場合知らなかったことではありません。知っているのに、記録が残っていない、様式に欄がない、誰の仕事か決まっていない。知識と運用の間が空いている状態です。この章で扱うのはその間を埋める話ですから、条文の暗記とは違う手つきが要ります。

SECTION 3不備だと、何が起きるか

判断の記録がないと、判断しなかったことになります

事故や監査のあとに問われるのは、そのとき何を見て、どう判断したかです。点呼記録簿に「異常なし」とだけあり、拘束時間の集計が翌月まで作られていなければ、判断の材料が手元になかったことになります。適切に判断したことを示す方法は、記録しかありません。

逆に、枠を超えそうな運行を組み替えた記録、疲労を訴えた運転者を出さなかった記録、荷主に遅延を伝えた記録が残っていれば、それは体制がある証拠になります。普段は手間でしかない紙が、この場面では会社の側に立ちます——第1章から繰り返し出てきた話が、この章でも同じ形で出てきます。

やってはいけない直し方

試験対策として条文と数値だけを覚え、自社の様式は業界団体の雛形のまま使う。——雛形は出発点としては良いのですが、自社の運行に合わない欄が残り、必要な欄がないまま使われがちです。睡眠不足の欄がない点呼記録簿、教育の項目が印刷済みで実施内容が書けない教育記録。様式は、書く人が書ける形になっているかどうかで決まります。使いにくい様式は、いずれ形だけ埋められるようになります。

確認の一問一答

運行管理者試験の「実務上の知識及び能力」の分野は、他の分野と何が違うか。

条文の文言を問うのではなく、運行の条件や事例を示して、運行管理者としての判断や計算を問う形になっている点です。ただし、枠(改善基準告示の上限など)を超える選択肢は正解になりません。

運行管理者の業務は、どの条文に定められているか。

貨物自動車運送事業輸送安全規則第20条です。点呼の実施、運転者等台帳の作成、指導監督、運行の指示など、営業所で日々行う業務が並んでいます(1-18)。

巡回指導や監査で指摘される不備は、多くの場合どのような性質のものか。

知識がないことよりも、記録が残っていない、様式に必要な欄がない、担当が決まっていないという運用上の不備です。適切に判断したことを示す方法は記録しかありません。

根拠貨物自動車運送事業法 第18条・第22条(運行管理者)/貨物自動車運送事業輸送安全規則 第3条・第20条(運行管理者の業務)
確認本記事は法令の条文および国土交通省・厚生労働省・警察庁の公表資料にもとづき作成し、記載の確認日時点の制度を反映しています。指針・マニュアル・ガイドラインの類は改訂されることがあり、物理や生理に関する用語には公的な定義が置かれていないものもあります。実際の運用にあたっては最新の告示・公表資料をご確認のうえ、個別の判断は必ずご相談ください。

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