CHAPTER 5 ── 5-03
指導及び監督
— 12の項目と、記録の3年
輸送安全規則第10条第1項が、運転者に対する指導及び監督を事業者の義務としています。その中身を定めているのが指導監督指針(平成13年国土交通省告示第1366号)で、一般的な指導及び監督として12の項目が並びます。項目を知っているだけでは足りません。記録を3年間保存することまでが、この条文の求めるところです。
SECTION 1試験ではこう問われる
条文は一行、中身は告示に十二あります
輸送安全規則第10条第1項は、事業者に対し、運転者に安全な運転に必要な運転の技術及び法令に定める事項について適切な指導及び監督をしなければならないと定めています。そしてその記録を営業所において3年間保存すること。条文はここまでです。何を教えるかは、国土交通大臣が告示で定める指針に委ねられています。
その指針が「貨物自動車運送事業者が事業用自動車の運転者に対して行う指導及び監督の指針」(平成13年国土交通省告示第1366号)です。第一章が一般的な指導及び監督、第二章が特定の運転者に対する特別な指導(5-04)。第一章に並ぶ項目は、十二あります。
| ① 心構え | 事業用自動車を運転する場合の心構え |
|---|---|
| ② 遵守すべき基本的事項 | 事業用自動車の運行の安全を確保するために遵守すべき基本的事項 |
| ③ 構造上の特性 | 事業用自動車の構造上の特性5-10 |
| ④ 正しい積載方法 | 貨物の正しい積載方法4-05 |
| ⑤ 過積載の危険性 | 過積載の危険性4-06 |
| ⑥ 危険物 | 危険物を運搬する場合に留意すべき事項 |
| ⑦ 経路と道路の状況 | 適切な運行の経路及び当該経路における道路及び交通の状況 |
| ⑧ 危険の予測と回避 | 危険の予測及び回避並びに緊急時における対応方法 |
| ⑨ 適性に応じた運転 | 運転者の運転適性に応じた安全運転 |
| ⑩ 生理的・心理的要因 | 交通事故に関わる運転者の生理的及び心理的要因並びにこれらへの対処方法5-08 |
| ⑪ 健康管理 | 健康管理の重要性5-05・5-06 |
| ⑫ 安全装置 | 安全性の向上を図るための装置を備える事業用自動車の適切な運転方法5-12 |
⑫は後から加わった項目です。衝突被害軽減ブレーキなどが普及したことを受けて、装置があることを前提にした運転をさせないための指導が求められるようになりました。項目の並びは、そのまま年間の教育計画の骨組みに使えます。
設問では、この十二から一つ抜いた形か、特別な指導(5-04)の項目を混ぜた形で誤りが作られます。「初任運転者に対する指導」は第二章の話で、一般的な指導とは別立てです。あわせて、記録の保存は3年。点呼記録簿の1年(1-05)、運行記録計の1年(5-12)と混ざりやすいところです。
SECTION 2現場ではこう現れる
項目を埋める教育と、運行に効く教育
教育記録の様式には、十二の項目があらかじめ印刷されているものが多くあります。便利なのですが、項目名だけが並び、実施内容が書けない様式だと、記録は毎月同じ顔になります。巡回指導で見られるのは項目の数ではなく、自社の運行に即した指導が行われたかどうかです。
効かせ方は単純で、項目に自社の材料を結びつけることです。⑦の「経路及び道路の状況」なら、実際に走っている経路のこの交差点、この下り坂。⑧の「危険の予測」なら、先月ヒヤリとした場面の映像(5-12)。⑩の「生理的要因」なら、夜間便の運転者に暗順応の話をする。材料は自社の運行の中にあります。よそから持ってくる必要はありません。
- ✓4月 ①心構え ②基本的事項全員・座学
- ✓6月 ④積載方法 ⑤過積載実車で
- ✓8月 ⑩生理的要因(暑熱・疲労)夜間便中心
- ✓11月 ③構造上の特性 ⑧危険の予測映像を使う
- ✓1月 ⑦経路(凍結)⑫安全装置経路図つき
季節に合わせて項目を割ると、内容が具体的になります。8月に凍結の話をしても身に入りません。年度のはじめに計画を作り、実施のたびに「何を材料に使ったか」を1行書き足す。これだけで記録の中身が変わります。
記録に何を書くか
実施日、対象者、実施者、そして指導の内容。内容の欄に「安全運転について」とだけ書かれていると、何をしたか分かりません。「熊本東バイパスの◯◯交差点での左折時の巻き込み防止について、実車で死角を確認」——このくらい書いてあれば、三年後に読んでも意味が通ります。記録は将来の自分に宛てた文書だと考えると、書きぶりが決まります。
SECTION 3不備だと、何が起きるか
指導の記録がないと、事故のあとに戻れません
事故が起きたとき、その運転者に何を教えていたかが問われます。記録がなければ、教えていなかったことになります。実際には毎朝の点呼で伝えていたとしても、それを示す材料が会社の側にありません。指導及び監督は事業者の義務ですから、果たしていなかったという評価になります。
巡回指導では、記録の有無と3年分そろっているかが見られます。そして監査では、実施していない期間があれば行政処分の対象です。1か月に一度、30分でも実施して記録を残すほうが、年に一度まとめて何時間もやるよりも、体制としては評価されます。
実施していない月の記録を、あとからまとめて作る。全員に同じ紙を配って署名だけもらう。教育の内容を「別紙のとおり」として別紙を作らない。——一つめは記録の作り替えです。二つめは、指導を受けた事実がないのに記録だけがある状態で、事故のあとに運転者本人が「受けていない」と述べれば、かえって不利になります。やっていないなら、これから始める。過去にさかのぼって作った記録は、体制の証拠にはなりません。
確認の一問一答
運転者に対する指導及び監督の記録は、どこに何年間保存しなければならないか。
営業所において3年間保存します(貨物自動車運送事業輸送安全規則第10条第1項)。点呼記録簿の1年間、運行記録計の記録の1年間と混同しないよう注意します。
指導及び監督の指針において、一般的な指導及び監督の項目はいくつあるか。そのうち三つを挙げよ。
十二項目です。たとえば「事業用自動車の構造上の特性」「危険の予測及び回避並びに緊急時における対応方法」「交通事故に関わる運転者の生理的及び心理的要因並びにこれらへの対処方法」などがあります。
教育記録の「指導の内容」の欄には、どのように書くのが適切か。
指針の項目名だけでなく、自社の運行に即した具体的な材料(どの経路のどの場面を、どういう方法で扱ったか)まで書きます。三年後に読んで何をしたか分かる書きぶりが目安です。