CHAPTER 4 ── 4-01
道路交通法とは何か
— 運転者の義務が、使用者にも及ぶしくみ
道路交通法は、運転者に守らせる法律です。しかし運送業では、そこで終わりません。第75条が、無免許・速度超過・酒気帯び・過労運転・過積載などを使用者が命じ、または容認することを禁じており、違反があれば車の使用を停止させる命令まで用意されています。運転者の違反が、そのまま会社の問題として跳ね返ってくる——第4章はその構造から入ります。
SECTION 1試験ではこう問われる
運転者を縛る法律が、使用者にも届いている
道路交通法の目的は、第1条にこう書かれています。道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、及び道路の交通に起因する障害の防止に資すること。読めば分かるとおり、道路の上で起きることを規律する法律です。第1章の貨物自動車運送事業法が「事業」を、第3章の道路運送車両法が「車」を規律していたのに対して、こちらは「走っている場面」を扱います。
ただし運送業では、これを「運転者が守る法律」として読むと足りません。第75条が、使用者側にも同じ違反を持ち込んでいるからです。
設問では、第75条に挙げられている行為が何かを問う形と、使用制限命令の期間(6か月を超えない範囲)を問う形が出ます。「容認」も違反であるという点は落とせません。積極的に命じていなくても、知りながら黙認していれば同じ扱いになります。
SECTION 2現場ではこう現れる
「知らなかった」と言えるかどうかが分かれ目です
下命・容認が問われる場面で、会社の側の説明はたいてい「そこまでは知らなかった」になります。ここで効いてくるのが、知る仕組みがあったかどうかです。運転者が違反の切符を切られたことが会社に上がってこない、事故の連絡が翌日になる、日報を見れば分かるはずの拘束時間を誰も集計していない——こういう状態は、知らなかったことの説明にはならず、むしろ体制の不備として扱われます。
逆に、違反や事故がその日のうちに運行管理者へ上がる形を作り、上がってきたものに手当てをしている記録があれば、話はまるで違います。第1章で扱った点呼記録簿と日報、第2章の拘束時間の集計——それらが「知る仕組み」の実体です。第4章の内容が、前の三つの章とひと続きになるのはここです。
- ✓誰に連絡するか運行管理者
- ✓いつまでにその日のうち
- ✓何を伝えるか日時・場所・内容
- ✓どこに残すか運転者等台帳
- ✓再発防止をどうするか個別指導・記録
四行目が要点です。違反歴は運転者等台帳の記載事項ですから(1-14)、そこに戻す。連絡が来ても記録に残らなければ、体制があることの説明になりません。
第4章は、前の三つの章の総合問題になります
過労運転は、改善基準告示の拘束時間(第2章)と同じ運行を別の角度から見たものです。過積載は、車検証の最大積載量(第3章)と、運行指示書・日報(第1章)につながります。酒気帯びは、点呼のアルコール検知器(1-07)そのものです。道路交通法の条文を、前の章で扱った帳票のどれと結びつけるか——この読み方をすると、第4章は覚える量がむしろ減ります。
SECTION 3不備だと、何が起きるか
車が止まると、事業のほうが先に困ります
使用制限命令が出れば、その自動車は運転を禁止されます。期間は6か月を超えない範囲で、標章が貼られます。1台減った状態で、契約している運行を回さなければならない——罰金や反則金より、この期間の損失のほうが会社にとっては重い。
そして、道路交通法上の違反は、事業の側の監査の端緒にもなります。過労運転や過積載は輸送安全規則にも同じ趣旨の規定があり、警察から運輸局へ通報される仕組みもあります。ひとつの運行が、二つの窓口で見られるという構造は、改善基準告示(2-01)と同じです。
運転者が反則切符を切られたが、本人の問題として会社では記録しない。事故の連絡を受けたが、荷を届けてから報告させる。——どちらも、会社が知る機会を自分で潰しています。違反や事故を記録すると不利になる、と考えるのは逆です。上がってきたものに手当てをした記録こそが、下命・容認を否定する材料になります。隠すのではなく、残して直す。順序はそれだけです。
確認の一問一答
自動車の使用者等が、運転者に対して命じ、または容認してはならない行為を挙げよ。
無免許運転、最高速度違反、酒気帯び運転、過労運転、その車を運転できる資格を欠く者に運転させること、過積載運転、放置駐車となる状態を作ること——第75条第1項第1号から第7号までが挙げているのはこれらです。
使用者が第75条第1項に違反し、交通の危険を生じさせるおそれがあるとき、公安委員会は何をすることができるか。期間も答えよ。
使用の本拠の位置を管轄する公安委員会が、6か月を超えない範囲で期間を定め、当該自動車を運転し、または運転させてはならない旨を命ずることができます(第75条第2項)。
使用者が積極的に指示していなければ、運転者の違反について第75条の責任を問われることはない。○か×か。
×。同条は「命じ、又は容認してはならない」と定めています。知りながら黙認していた場合も対象です。