CHAPTER 4 ── 4-02
最高速度
— 生活道路の30キロと、高速道路の大型貨物90キロ
運送業に関係する法定最高速度が、ここ数年で二か所動きました。一つは高速自動車国道の本線車道での大型貨物自動車等が、令和6年4月から時速90キロメートルになったこと。もう一つは令和8年9月1日から、中央線等のない生活道路の法定速度が時速30キロメートルに引き下げられたこと。どちらも運行計画に直接効いてきます。
SECTION 1試験ではこう問われる
道路標識がなければ、道路の形で速度が決まります
最高速度には二つあります。道路標識等で指定されている場合の規制速度と、指定がない場合の法定速度。試験で問われるのは後者で、政令が定めています。そして運送業に関係する法定速度が、ここ数年で二か所動きました。どちらも数字を覚え直す必要があります。
一つめの改正 ── 高速道路の大型貨物が90キロに
高速自動車国道の本線車道における法定最高速度は、長く大型貨物自動車等が時速80キロメートルでした。これが令和6年4月1日から時速90キロメートルに引き上げられています(道路交通法施行令の一部を改正する政令=令和6年政令第43号)。対象は大型貨物自動車および特定中型貨物自動車で、牽引するもの(トレーラ)は除かれます。トレーラ、大型特殊自動車、三輪の自動車は従来どおり80キロメートル毎時です。
二つめの改正 ── 生活道路が30キロに
もう一つが、令和8年9月1日からの生活道路の法定速度の引下げです。一般道路の法定速度は長く時速60キロメートルでしたが、中央線や車両通行帯が設けられておらず、道路の構造上または柵その他の内閣府令で定める工作物により往復の方向別に分離されてもいない道路——いわゆる生活道路——については、時速30キロメートルになりました。中央線のある道路、車両通行帯のある道路、自動車専用道路は従来どおり60キロメートル毎時です。
高速自動車国道の本線車道における最高速度は、次に掲げる自動車にあつては百キロメートル毎時とする。イ 大型自動車のうち専ら人を運搬する構造のもの ロ 中型自動車のうち専ら人を運搬する構造のもの又は車両総重量が八千キログラム未満、最大積載重量が五千キログラム未満及び乗車定員が十人以下のもの ハ 準中型自動車 ニ 普通自動車 ホ 大型自動二輪車 ヘ 普通自動二輪車。大型自動車のうちイに掲げるもの以外のもの及び中型自動車のうちロに掲げるもの以外のものにあつては九十キロメートル毎時、前二号に掲げる自動車以外の自動車にあつては八十キロメートル毎時とする。(イからニまでには、いずれも「三輪のもの並びに牽引するための構造及び装置を有し、かつ、牽引されるための構造及び装置を有する車両を牽引するものを除く。」という括弧書きが付きます。トレーラと三輪が80キロメートル毎時に残るのは、この括弧書きによるものです。)
SECTION 2現場ではこう現れる
所要時間の見立てが、二方向から動きました
この二つの改正は、運行計画の所要時間を逆向きに動かします。高速の走行区間は速くなり、末端の配送区間は遅くなる。長距離の幹線輸送では前者の効き目が大きく、市街地の集配では後者が効きます。どちらも、これまでの実績値をそのまま使えなくなったということです。
とくに注意が要るのが生活道路のほうです。速度が半分になるのに、配送先の件数と時間指定は変わらない。末端の1件あたりの所要時間が伸びるのに計画を据え置けば、現場は速度で取り戻そうとします。それは違反であると同時に、事故の確率を上げる選択です。改善基準告示の拘束時間(2-03)の枠は動きませんから、件数のほうを見直すことになります。
- ✓幹線(高速)区間の所要時間見直し済
- ✓末端(生活道路)区間の所要時間見直し済
- ✓1日の配送件数の上限再設定
- ✓運転者への周知(教育記録)◯月実施
最後の1行は、指導監督の記録(1-20)にそのまま入ります。法令の改正を運転者に伝えることは教育の項目の一つですから、この機会に記録を残しておくと二重に効きます。
速度抑制装置との関係
車両総重量8トン以上または最大積載量5トン以上の貨物自動車には、時速90キロメートルを超えて走らないよう速度抑制装置が備えられています(3-08)。高速道路の法定速度が90キロメートル毎時になったことで、装置の上限と法定速度がほぼ揃った形です。これまでは装置が90で頭打ちなのに法定は80、という状態でしたから、実勢との差が縮まったことになります。
SECTION 3不備だと、何が起きるか
速度超過は、使用者の側にも規定があります
最高速度違反は、第75条第1項第2号にそのまま挙げられています。運転者に速度超過を命じ、または容認してはならない。到着時刻から逆算して、法定速度では間に合わない計画を渡していれば、命じたのと変わらないと見られる余地があります。運行指示書に書いた時刻が、そのまま証拠になります。
そして運転者側では、反則行為として点数が付き、超過の程度によっては反則金の対象を外れて刑事手続に進みます。点数が積み上がれば免許停止となり、その運転者を乗せられない期間が生じます。1人が乗れなくなる影響は、小さな会社ほど大きい——速度の管理が経営の話になるのは、この経路です。
生活道路が30キロになって遅れが出るので、計画はそのままにして「現場で調整」させる。デジタコの速度警報の設定を緩める。——どちらも、速度超過を容認する形に近づきます。改正で所要時間が伸びたのなら、伸びた前提で計画を組み直す。荷主に到着時刻の相談をするのはその次です。順序を逆にすると、運転者に無理が集まります。
確認の一問一答
高速自動車国道の本線車道における大型貨物自動車の法定最高速度は、令和6年4月1日から何キロメートル毎時になったか。また、トレーラはどうか。
大型貨物自動車および特定中型貨物自動車(牽引するものを除く)は時速90キロメートルです。トレーラ、大型特殊自動車、三輪の自動車などは従来どおり時速80キロメートル、それ以外の自動車は時速100キロメートルです。
令和8年9月1日から、中央線等が設けられていない道路(生活道路)における自動車の法定最高速度は何キロメートル毎時になったか。
時速30キロメートルです。中央線または車両通行帯が設けられている道路、中央分離帯等で往復の方向別に分離されている道路、自動車専用道路は、従来どおり時速60キロメートルです。
道路標識等により最高速度が時速40キロメートルと指定されている生活道路では、法定速度と指定速度のどちらが適用されるか。
道路標識等による指定速度(時速40キロメートル)が適用されます。法定速度は、指定がない場合に適用されるものです。