CHAPTER 3 ── 3-04
日常点検整備
— 1日1回、その運行の開始前に
日常点検は、乗務前点呼で確認される三つのうちの一つです(1-05)。原則は「走行距離や運行時の状態等から判断した適切な時期に」ですが、事業用自動車などは違います。1日1回、その運行の開始前に行わなければなりません。点呼で「日常点検の実施またはその確認」が求められているのは、この義務が前提にあるからです。
SECTION 1試験ではこう問われる
原則は「適切な時期に」、事業用は「1日1回、運行の開始前」
日常点検整備の条文は二段構えになっています。第47条の2第1項が原則で、自動車の使用者は、走行距離や運行時の状態等から判断した適切な時期に、灯火装置の点灯、制動装置の作動その他の日常的に点検すべき事項について、目視等により点検しなければならない。ここまでは自家用の乗用車も同じです。
第2項が、運送業に効いてくる規定です。法第48条第1項第1号および第2号に掲げる自動車——事業用自動車、車両総重量8トン以上の自家用自動車、レンタカーなど——の使用者またはこれらを運行する者は、1日1回、その運行の開始前において、第1項の点検をしなければならない。「適切な時期に」ではなく「1日1回、運行の開始前」。この差が、試験でそのまま問われます。対象は事業用に限られず、定期点検が3か月ごと・6か月ごとになる自動車(3-05)と同じ範囲だ、と押さえておくと正確です。
自動車の使用者は、自動車の走行距離、運行時の状態等から判断した適切な時期に、灯火装置の点灯、制動装置の作動その他の日常的に点検すべき事項について、目視等により自動車を点検しなければならない。次条第一項第一号及び第二号に掲げる自動車の使用者又はこれらの自動車を運行する者は、一日一回、その運行の開始前において、前項の規定による点検をしなければならない。使用者は、点検の結果、当該自動車が保安基準に適合しなくなるおそれがある状態又は適合しない状態にあることが明らかになつたときは、保安基準に適合しなくなるおそれをなくするため、又は保安基準に適合させるために当該自動車について必要な整備をしなければならない。
三つ目の項も落とせません。点検の結果、保安基準に適合しなくなるおそれがある状態、または適合しない状態にあるときは、必要な整備をしなければならない。点検は見るだけで終わりではなく、見つけたら直すところまでが義務です。日常「点検整備」という名前になっているのは、このためです。
点検の項目は、点検基準の別表で決まっています
何を見るかは、自動車点検基準の別表第一に定められています。事業用の貨物自動車では、大きくブレーキまわり、タイヤまわり、原動機まわり、灯火装置、そしてエア・タンクの凝水といった系統で並んでいます。空気ブレーキの車では、ブレーキ・バルブからの排気音やエア・タンクの水抜きが入ってくるのが、自家用の乗用車との違いです。
SECTION 2現場ではこう現れる
点呼で「実施またはその確認」と言われる理由
乗務前点呼で確認する三つのうちの一つが、日常点検の実施またはその確認でした(1-05)。「実施」ではなく「実施またはその確認」と書かれているのは、点検そのものは運転者が行い、運行管理者はそれが行われたことを確かめる、という形も認められているからです。運行管理者が全車両を自分で点検して回る必要はありません。
ここで実務上の弱点になるのが、日常点検には記録簿の作成義務がないことです。定期点検には点検整備記録簿がありますが(3-06)、日常点検にはありません。ですから、日常点検が行われたことを外から確かめる唯一の記録が、点呼記録簿になります。点呼記録簿の日常点検の欄が空欄のまま並んでいる会社は、日常点検を行った証拠を持っていないのと同じことになります。
- ✓誰が行うか運転者
- ✓いつ行うか運行開始前
- ✓不具合を見つけたときの連絡先整備管理者
- ✓点呼記録簿の記入欄実施/確認
三行目を決めていない会社が意外に多い。「見つけたけれど、誰に言えばいいか分からないので、そのまま出た」——事故のあとにこの証言が出ると、体制そのものが問われます。連絡先を1か所に決めて、点呼のときに口に出させる。
チェックシートを使うかどうか
法令上の作成義務はありませんが、日常点検のチェックシートを作って運転者に記入させている会社もあります。義務がない記録をあえて作るかどうかは、経営判断です。作れば、点検が行われたことを示す材料が増えます。一方、形だけの記入が並べば、かえって実態と食い違う記録を残すことになります。当事務所では、記録を増やすより、点呼記録簿の欄をきちんと運用することを先にお勧めしています。帳票が増えるほど、埋まらない欄も増えるためです。
SECTION 3不備だと、何が起きるか
事故のあと、いちばん最初に問われます
整備不良に起因する事故が起きたとき、真っ先に確認されるのが日常点検です。タイヤの脱落、ブレーキの不良、灯火の不点灯——いずれも日常点検の項目に入っています。点検していれば気づけたはずのものが原因だった場合、その日の点呼記録簿と、直前の定期点検の記録が並べて見られます。
巡回指導でも、点呼記録簿の日常点検の欄は確認項目です。実施の記録がない状態が続いていれば、日常点検が行われていない疑いとして扱われます。点検そのものは1台あたり数分の作業ですが、行った証拠が残らなければ、行っていないのと同じ扱いになる。記録の話に帰着するのは、第1章と同じ構造です。
灯火の不点灯を見つけたが、その日の配送を終わらせてから直すことにする。エア・タンクの水抜きを、寒い時期だけ省く。——どちらも、点検して見つけたのに整備しなかった、という形になります。第47条の2第3項は、見つけたら整備することまでを義務にしています。見つけた時点で走らせない判断ができるように、代車の段取りと連絡先を先に決めておく。決めていないと、現場は走らせるほうを選びます。
確認の一問一答
事業用自動車の日常点検整備は、いつ行わなければならないか。
1日1回、その運行の開始前です(法第47条の2第2項)。原則である「走行距離、運行時の状態等から判断した適切な時期に」(第1項)とは異なります。なお、この1日1回の義務は事業用自動車だけでなく、車両総重量8トン以上の自家用自動車などにもかかります。
日常点検の結果、自動車が保安基準に適合しない状態にあることが分かった場合、使用者はどうしなければならないか。
保安基準に適合させるために必要な整備をしなければなりません(法第47条の2第3項)。点検して終わりではありません。
日常点検整備を行ったときは、その結果を点検整備記録簿に記載しなければならない。○か×か。
×。点検整備記録簿の記載が義務づけられているのは定期点検整備です。日常点検には記録簿の作成義務がありません。そのぶん、点呼記録簿での確認の記録が実務上の裏づけになります。