CHAPTER 3 ── 3-06
点検整備記録簿
— 何を書き、いつまで持つか
定期点検をしたら記録簿に記載し、備え置きます。事業用自動車の保存期間は1年間。第1章で扱った帳票(1-10)と同じく、年限を取り違えやすいところです。書く内容は、法第49条第1項が五つ(点検の年月日/点検の結果/整備の概要/整備を完了した年月日/その他省令で定める事項)を掲げ、その五つ目として省令が三つ(自動車登録番号等/総走行距離/実施した者の氏名または名称および住所)を定めています。整備工場に出した場合も、記録簿は自社に戻ってきます。
SECTION 1試験ではこう問われる
書くのは五つ、持つのは1年
定期点検整備をしたときは、点検整備記録簿を当該自動車に備え置き、記載しなければなりません(第49条第1項)。設問になるのは、何を記載するかと何年保存するかの二つです。記載事項は法律の側に五つ並んでおり、その五つ目が省令に委ねられています。
| 法 第49条第1項 | 中身 |
|---|---|
| ① 点検の年月日 | いつ点検したか |
| ② 点検の結果 | 各項目についての判定 |
| ③ 整備の概要 | 何を整備したか |
| ④ 整備を完了した年月日 | いつ整備が終わったか |
| ⑤ その他国土交通省令で定める事項 | 次の表の三つ(自動車点検基準 第4条第1項) |
| 省令で定める事項 | 中身 |
|---|---|
| 車を特定する情報 | 登録自動車は自動車登録番号、車両番号の指定を受けた自動車は車両番号、その他の自動車は車台番号 |
| 総走行距離 | 点検または特定整備を実施した時の総走行距離 |
| 実施した者 | 点検または整備を実施した者の氏名または名称および住所(実施者が使用者と同一のときは氏名または名称のみ) |
保存期間は、法第49条第3項が「国土交通省令で定める」としており、自動車点検基準第4条第2項が定めています。事業用自動車は1年間(同基準第2条第1号〜第4号の自動車)。第5号・第6号の自動車は2年間です。第1章で扱った帳票と並べると、業務記録が1年、運転者等台帳が退職後3年、教育記録が3年(1-10)。点検整備記録簿は1年の側に入ります。
自動車の使用者は、点検整備記録簿を当該自動車に備え置き、当該自動車について、第四十七条の二第三項若しくは前条の規定による点検若しくは整備又は特定整備をしたときは、遅滞なく、次に掲げる事項を記載しなければならない。一 点検の年月日 二 点検の結果 三 整備の概要 四 整備を完了した年月日 五 その他国土交通省令で定める事項。──「法第四十九条第一項第五号の国土交通省令で定める事項は、次のとおりとする。一 登録自動車にあつては自動車登録番号、法第六十条第一項後段の車両番号の指定を受けた自動車にあつては車両番号、その他の自動車にあつては車台番号 二 点検又は特定整備を実施した時の総走行距離 三 点検又は整備を実施した者の氏名又は名称及び住所(点検又は整備を実施した者が当該自動車の使用者と同一である場合にあつては、その氏名又は名称)」。点検整備記録簿の保存期間は、記載の日から、第二条第一号から第四号までに掲げる自動車にあつては一年間、同条第五号及び第六号に掲げる自動車にあつては二年間とする。
備え置く場所
第49条第1項は、点検整備記録簿を当該自動車に備え置くことを求めています。事務所のファイルに綴っておくだけ、という運用は条文の形とは違います。ただし実務上は、車載していると汚損・紛失が起きやすく、監査のときにまとめて出せないという不便もあります。車載を原則にしつつ、写しを事務所で1冊にまとめておく——という形にしている会社が多く、確認の求めにも応じやすくなります。
SECTION 2現場ではこう現れる
整備工場に出した回の記録が、いちばん抜けます
自社で点検している会社より、整備工場に出している会社のほうが、記録簿が揃っていない——これは実際によく見ます。工場からは請求書と作業明細が届きます。それで済ませてしまい、点検整備記録簿を受け取っていない、あるいは受け取ったが車に戻していない。請求書は費用の記録であって、点検の記録ではありません。
整備工場に出すときに、記録簿を出して記入してもらう。戻ってきたら車に戻し、写しを事務所の綴りに足す。この一往復を決めておくだけで、抜けはほぼなくなります。工場との付き合いが長いほど「言わなくても分かっているはず」になりがちなところですから、一度だけ文書で伝えておくのが確実です。
- ✓自動車登録番号熊本100か◯◯
- ✓点検の年月日◯年5月10日
- ✓総走行距離412,830km
- ✓実施した者の氏名・住所◯◯自動車
- ✓点検の結果と整備の内容記入済
- ✓保存の期限(1年)翌年5月9日
総走行距離の欄が空白のまま返ってくることがあります。ここは記載事項ですから、空欄なら埋めてもらう。距離が入っていると、点検の間隔が距離の面でも説明できるようになります。
1年で捨ててよいか
保存期間は1年ですが、実務では車両を手放すまで残しておくほうが有利な場面があります。中古で売るときの整備履歴として使えますし、同じ箇所の不具合が繰り返しているかどうかも、数年分を並べてはじめて見えます。法令上の下限が1年であって、上限ではありません。場所を取るものでもありませんから、車両ごとの綴りをそのまま置いておくことをお勧めしています。
SECTION 3不備だと、何が起きるか
点検をしたことの証拠が、これしかありません
定期点検を実際に行っていても、記録簿がなければ、行ったことを示す手段がありません。巡回指導・監査で確認されるのは点検そのものではなく、記録簿です。整備工場の請求書を出しても、それは点検の記録として扱われません。記録がないことは、未実施と同じ結果になります。
そして、事故のあとに整備の履歴を求められたときも、出せるのはこの記録簿です。直近の点検で当該箇所を見たかどうか、そのとき何を整備したか。記録簿があれば「見て、直していた」と言え、なければ何も言えない——差が出るのはこの一点です。
記録簿が見つからないので、整備工場に頼んで過去分をまとめて書いてもらう。総走行距離を、いまのメーターから逆算して埋める。——記録簿は点検を実施した者が、実施したときに書くものです。まとめ書きは、実態と異なる記録の作成にあたります。抜けている回は抜けているものとして、次の点検から記録簿を出して書いてもらう運用に切り替える。過去を作り替えるより、そのほうが早く、そして安全です。
確認の一問一答
点検整備記録簿に記載しなければならない事項を、法第49条第1項の順に挙げよ。
①点検の年月日、②点検の結果、③整備の概要、④整備を完了した年月日、⑤その他国土交通省令で定める事項、の五つです。⑤として自動車点検基準第4条第1項が、自動車登録番号等・点検または特定整備を実施した時の総走行距離・実施した者の氏名または名称および住所、の三つを定めています。
事業用自動車の点検整備記録簿の保存期間は何年か。
記載の日から1年間です。自動車点検基準第2条第5号・第6号に掲げる自動車は2年間です。
点検整備記録簿は、事務所に保管しておけばよい。○か×か。
×。法第49条第1項は、点検整備記録簿を当該自動車に備え置くこととしています。実務では車載を原則としつつ、写しを事務所でまとめて保管しておくと、確認の求めに応じやすくなります。