CHAPTER 2 ── 2-10
労働時間・休憩・休日と、36協定
— 自動車運転の業務にかかる年960時間の上限
労働基準法の骨格は、1日8時間・1週40時間、休憩は6時間超で45分・8時間超で1時間、休日は毎週1日または4週4日。これを超えて働かせるには36協定が要ります。令和6年4月から、自動車運転の業務にも時間外労働の上限規制が適用されました。ただし一般の業種とは中身が違い、特別条項付きで年960時間。月100時間未満や複数月平均80時間以内の枠は適用されません。
SECTION 1試験ではこう問われる
骨格は8時間・40時間・45分・1時間・毎週1日
労働基準法のうち、運行管理者試験で問われるのは範囲が決まっています。まず労働時間の原則です。使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間、1日について8時間を超えて労働させてはならない。休憩は、労働時間が6時間を超える場合に少なくとも45分、8時間を超える場合に少なくとも1時間を、労働時間の途中に与える。休日は毎週少なくとも1回、または4週間を通じ4日以上。この五つの数字が土台です。
| 項目 | 数値 | 条文と補足 |
|---|---|---|
| 労働時間 | 1日8時間 1週40時間 | 第32条。休憩時間を除く実労働時間 |
| 休憩 | 45分/1時間 | 第34条。6時間超で45分、8時間超で1時間。労働時間の途中に与え、自由に利用させる(一斉付与の原則は運送の事業には適用されない) |
| 休日 | 毎週1回 または4週4日 | 第35条。4週4日とする場合は就業規則等で起算日を定める |
| 時間外・休日労働 | — | 第36条。労使協定(36協定)の締結と、所轄労働基準監督署長への届出が必要 |
休憩について、運送業で押さえておきたいのが「一斉に与える」の原則と、その適用除外です。第34条第2項は休憩を一斉に与えることを求めていますが、運送の事業についてはこの規定が適用されません(労働基準法施行規則第31条、同法別表第一第四号)。運転者ごとに休憩の時刻が違っても、そのために労使協定を結ぶ必要はありません。一方で、休憩を労働時間の途中に与える義務と、自由に利用させる義務は適用されます。「電話が鳴ったら出るように」という待機は、休憩ではなく労働時間です(2-02)。
令和6年4月からの上限規制 ── 自動車運転の業務は年960時間
36協定を結べば時間外労働をさせることができますが、その上限も法律で決まっています。一般の業種は原則が月45時間・年360時間で、特別条項を結んでも年720時間、月100時間未満、複数月平均80時間以内、月45時間超は年6回まで、という枠がかかります。自動車運転の業務については、令和6年4月から上限規制の適用が始まりましたが、中身が違います。
ここが理解の要点です。月の歯止めがないのではなく、月の歯止めは改善基準告示の拘束時間(1か月284時間・310時間)が担っている。労働基準法と改善基準告示の二本立て(2-01)が、上限規制の設計にもそのまま現れています。なお、年960時間は時間外労働の枠であり、休日労働はここに含まれません。
SECTION 2現場ではこう現れる
36協定の「業務の種類」で、枠が変わります
36協定は様式に業務の種類を書きます。自動車運転の業務は上限規制の内容が違いますから、運転者とそれ以外の従業員を分けて書く必要があります。倉庫作業や事務も同じ様式に一括りで書いていて、運転者にも年720時間の枠しか取っていない、あるいは逆に事務職まで960時間で届け出ている——どちらも実態と合いません。
もう一つ、締結の単位です。36協定は事業場ごとに締結し、その事業場を管轄する労働基準監督署長に届け出ます。営業所が複数あれば、営業所ごとです。拘束時間の労使協定(2-03)は届出不要、36協定は届出必要——この違いも押さえておきます。
- ✓業務の種類の記載自動車運転
- ✓特別条項の有無有
- ✓1年の時間外労働の上限960時間以内
- ✓届出(受付印)有
- ✓有効期間◯年4月〜1年
- ✓労働者への周知事務所に掲示
最後の1行を忘れがちです。36協定は届け出て終わりではなく、労働者に周知してはじめて効力が問題になります。掲示、備付け、書面の交付のいずれかで、いつでも見られる状態にしておきます。
休日労働は、2週間に1回まで
改善基準告示の側にも、休日労働の規定があります。休日に労働させる場合、当該休日の労働は2週間について1回を超えないものとし、当該休日の労働によって拘束時間および最大拘束時間を超えないこと。36協定で休日労働を協定していても、この枠は別にかかります。休日出勤を月に3回、4回と入れている運行計画は、この規定で外れます。
SECTION 3不備だと、何が起きるか
36協定がなければ、時間外労働そのものが違法になります
36協定を締結せず、あるいは届け出ずに時間外労働をさせれば、労働基準法第32条違反です。上限を超えたかどうか以前の問題として、時間外労働をさせる根拠がないことになります。協定の有効期間が切れたまま更新されていない——運送業に限らず、監督指導でよく指摘される形です。
そして、時間外労働の上限規制に違反した場合には罰則が定められています。改善基準告示は告示ですから、それ自体に罰則はありませんが、事業法上の処分につながる(2-01)。労働基準法の側には罰則があり、改善基準告示の側には事業の処分がある。二つのルートは、効き方が違うだけで、どちらも軽くはありません。
36協定の上限に近づいたので、時間外労働の一部を「歩合の対象外の時間」として賃金台帳から外す。休日労働を、振替休日を取ったことにして休日労働から外す。——賃金台帳とタイムカード、日報、点呼記録簿は、いずれも同じ人の同じ日を記録しています。どれか一つだけを変えても、他と合いません。時間外が枠に収まらないなら、人を増やすか、受ける運行を減らすか、荷主と時間の話をするか。打つ手は三つしかなく、記録を変えることはその中に入っていません。
確認の一問一答
使用者は、労働時間が6時間を超える場合には少なくとも◯分、8時間を超える場合には少なくとも◯時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。◯に入る数字は。
順に45分、1時間です。休憩は労働時間の途中に与え、自由に利用させなければなりません。なお、一斉に与える原則(第34条第2項)は、運送の事業には適用されません(労働基準法施行規則第31条)。
令和6年4月から自動車運転の業務に適用されている時間外労働の上限規制について、一般の業種には適用されるが自動車運転の業務には適用されない規定を三つ挙げよ。
①時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満であること、②同じく2〜6か月平均で80時間以内であること、③時間外労働が月45時間を超えられるのは年6か月までであること、の三つです。自動車運転の業務は、特別条項付き36協定を結んだ場合の年間の上限が960時間とされています。
改善基準告示は、休日労働について何回までと定めているか。
2週間について1回を超えないものとされています。あわせて、休日労働によって1か月・1年の拘束時間および1日の最大拘束時間を超えないこととされています。