CHAPTER 5 ── 5-09
止まるまでの距離
— 空走は速度に比例し、制動は二乗に比例する
停止距離は、空走距離と制動距離を足したものです。危険を感じてからブレーキが効き始めるまでに走る距離が空走距離、効き始めてから止まるまでが制動距離。この二つは伸び方が違います。空走距離は速度に比例して伸び、制動距離は速度の二乗に比例して伸びる。だから速度が少し上がるだけで、止まれる場所が大きく後ろにずれます。
SECTION 1試験ではこう問われる
二つの距離は、伸び方が違います
言葉を先に固めます。空走距離は、運転者が危険を感じてからブレーキを踏み、ブレーキが実際に効き始めるまでの間に車が走る距離。制動距離は、ブレーキが効き始めてから車が停止するまでの距離。この二つを合わせたものが停止距離です。
ここからが要点です。空走距離は速度に比例して伸びます。反応にかかる時間はだいたい一定ですから、速度が2倍なら空走距離も2倍。一方、制動距離は速度の二乗に比例して伸びます。速度が2倍なら制動距離は4倍。だから停止距離は、速度が上がるほど急に長くなります。
| 速度 | 空走距離 | 制動距離 | 停止距離 |
|---|---|---|---|
| 時速40km | 約 11 | 約 9 | 約 20 |
| 時速60km | 約 17 | 約 20 | 約 37 |
| 時速80km | 約 22 | 約 36 | 約 58 |
| 時速100km | 約 28 | 約 56 | 約 84 |
| 読み方 | 速度が40→80と2倍になると、空走距離は11→22の2倍、制動距離は9→36の4倍。合計では20→58で約3倍になります。 | ||
設問では、制動距離が速度に比例するとする形、空走距離が速度の二乗に比例するとする形で誤りが作られます。「反応にかかる時間は速度によらずほぼ一定」——ここから考えれば、どちらがどちらか迷いません。
SECTION 2現場ではこう現れる
車間距離は、メートルではなく秒で伝える
「50メートル空けろ」と指導しても、走りながら50メートルは測れません。秒で伝えるほうが実用になります。前の車がある地点を通過してから、自分が同じ地点を通過するまでの秒数を数える。国土交通省中部運輸局は、一般道で3秒以上、高速道路で4秒以上という目安を示しています。
秒で持つ利点は、速度が変わっても崩れないことです。時速40キロなら3秒は約33メートル、時速80キロなら約67メートル。速度に応じて自動的に距離が伸びます。運転者が計算しなくてよい形にしておくのが、指導の要点です。
- ✓一般道3秒以上
- ✓高速道路4秒以上
- ✓雨・タイヤの摩耗があるときさらに空ける
三行目が要点です。中部運輸局は、雨に濡れタイヤがすり減っている場合の停止距離が、乾いた路面でタイヤの状態が良い場合に比べて2倍程度に延びることがあるとしています。雨の日に同じ車間で走れば、そのぶん足りません。
大型車は、さらに長くなります
重い車ほど、止まるまでに時間がかかります。積載しているときとしていないときでも変わります。空車で慣れた感覚のまま満載で走ると、止まれる場所が後ろにずれる。この差を運転者が体で知っているとは限りません——構造上の特性として指導する項目です(5-10)。
SECTION 3不備だと、何が起きるか
追突は、トラックで最も多い事故の形です
事業用自動車の事故を業態ごとに見ると、トラックでは追突が大きな割合を占めます。国土交通省の事業用自動車総合安全プランでも、トラックの追突事故件数が独立した削減目標として掲げられています。車間距離と速度は、その目標にいちばん近いところにある項目です。
追突事故が起きたあとに確認されるのは、その日の運行計画と、車間距離についてどう指導していたかです。遅れを取り戻そうとして詰めていたとなれば、話は運行計画(5-02)に戻ります。指導の記録がなければ、指導及び監督(5-03)の不備になります。
衝突被害軽減ブレーキが付いているから車間は詰めても大丈夫、と考える。——装置は被害を軽減するものであって、必ず止まれるものではありません。天候や対象によっては作動しないこともあります。指導監督指針の第12項が「安全性の向上を図るための装置を備える事業用自動車の適切な運転方法」を挙げているのは、装置を前提にした運転をさせないためです(5-12)。装置があるぶん車間を詰めるなら、装置がないのと同じことになります。
確認の一問一答
空走距離・制動距離・停止距離をそれぞれ説明せよ。
空走距離は、運転者が危険を感じてからブレーキを踏み、ブレーキが実際に効き始めるまでに車が走る距離。制動距離は、ブレーキが効き始めてから車が停止するまでの距離。停止距離は、この二つを合わせた距離です。
速度が2倍になると、空走距離と制動距離はそれぞれ何倍になるか。
空走距離は速度に比例するので2倍、制動距離は速度の二乗に比例するので4倍になります。反応にかかる時間は速度によらずほぼ一定であるためです。
雨に濡れ、タイヤがすり減っている場合、停止距離はどうなるか。
乾いた路面でタイヤの状態が良い場合に比べて、2倍程度に延びることがあるとされています(国土交通省中部運輸局)。車間距離を秒で指導している場合も、雨天時にはさらに空けるよう伝えます。