CHAPTER 5 ── 5-07
睡眠不足と、点呼
— 平成30年6月に入った一行
輸送安全規則第3条第6項に「睡眠不足」の三文字が入ったのは、平成30年6月1日からです。あわせて点呼でも、睡眠不足の状況を報告させ、確認することになりました。疾病・疲労と並ぶ独立した事由として置かれたことに意味があります。眠れていない運転者は、乗務させてはならない——それを毎日の点呼で確かめる形になっています。
SECTION 1試験ではこう問われる
「疾病、疲労、睡眠不足その他の理由により」
輸送安全規則第3条第6項は、こう定めています。貨物自動車運送事業者は、乗務員等の健康状態の把握に努め、疾病、疲労、睡眠不足その他の理由により安全に運行の業務を遂行し、又はその補助をすることができないおそれがある乗務員等を事業用自動車の運行の業務に従事させてはならない。
この「睡眠不足」が加わったのは平成30年6月1日からです。それまでは「疾病、疲労その他の理由」でした。三文字が増えただけに見えますが、意味は小さくありません。疲れているかどうかとは別に、眠れているかどうかを独立して確かめることになったからです。同じ改正で、点呼で報告を求め確認する事項にも睡眠不足が加わりました。
貨物自動車運送事業者は、事業用自動車の運行の業務に従事しようとする運転者等に対して対面により、又は対面による点呼と同等の効果を有するものとして国土交通大臣が定める方法で点呼を行い、次に掲げる事項について報告を求め、及び確認を行い、並びに事業用自動車の運行の安全を確保するために必要な指示を与えなければならない。一 酒気帯びの有無 二 疾病、疲労、睡眠不足その他の理由により安全な運転をすることができないおそれの有無 三 道路運送車両法第47条の2第1項及び第2項の規定による点検の実施又はその確認 (以下略)
設問では、睡眠不足が入っていない古い条文で誤りを作る形、あるいは「疲労の一種として扱えばよい」とする形が出ます。条文に独立して並んでいるのが答えです。
第3条第7項 ── 交替運転者の配置
同じ第3条の第7項は、長距離運転または夜間の運転に従事する場合であって、疲労等により安全な運転を継続することができないおそれがあるときは、あらかじめ交替するための運転者を配置しなければならないと定めています。「あらかじめ」——現地で判断するのではなく、計画の段階で置く。第2章の長距離の特例(2-08)とも重なる話です。
SECTION 2現場ではこう現れる
点呼で「眠れましたか」をどう聞くか
睡眠不足の確認は、点呼記録簿に欄がなければ実質的に行われません。まず様式に欄を作ること。そのうえで、聞き方です。「大丈夫ですか」と聞けば、たいてい「大丈夫です」と返ってきます。「何時に寝て、何時に起きましたか」と時刻で聞くと、答えが数字になり、記録にも残せます。
そして数字が出たあとに何をするかを、先に決めておくこと。何時間を下回ったら乗務させないのか。法令に数値の基準はありませんから、これは会社が決める話です。決めていないと、その場の運行の都合で判断が動きます。基準を決めておくことは、運行管理者を守ることでもあります。
- ✓就寝時刻/起床時刻23:30/5:00
- ✓睡眠時間5時間30分
- ✓判定(自社基準◯時間)要確認
三行目に自社の基準を書いておくと、判定が毎回同じ物差しになります。基準を下回ったときの手順——別の運転者に替える、始業を遅らせる、便を分ける——も、あわせて決めておきます。基準だけあって手順がないと、結局そのまま出すことになります。
眠れない原因は、たいてい会社の側にあります
「眠れていない」と報告されたとき、それを本人の生活習慣の問題として扱うと、たいてい何も変わりません。前日の終業が遅く、当日の始業が早い——つまり休息期間が短いことが原因であるほうが多いからです(2-04)。睡眠不足は、点呼の場ではなく運行計画の段階でつくられている。過労運転(4-08)とまったく同じ構造です。
ですから、点呼で睡眠不足が続けて出る運転者がいたら、まずその人の直近1か月の終業時刻と始業時刻を並べてみる。休息期間が9時間ちょうどの日が続いていれば、そこが原因です。本人に何を言っても変わりません。
SECTION 3不備だと、何が起きるか
点呼記録簿に欄がないこと自体が、不備になります
巡回指導では、点呼記録簿の様式が条文の項目を満たしているかが見られます。睡眠不足の欄がない様式を使っていれば、確認していないと判断されます。平成30年6月の改正から時間が経っていますから、古い様式を使い続けている事業所は、それだけで指摘されます。
そして居眠りによる事故が起きたとき、確認されるのは点呼記録簿と、その日までの拘束時間・休息期間です。「睡眠不足なし」と記録されているのに休息期間が9時間を下回っていたとなれば、記録の信用そのものが疑われます。記録は、他の記録と整合していて初めて意味を持ちます。
睡眠不足の欄を作ったが、毎日「なし」に丸を付けるだけの運用にする。眠れていないと言われた運転者に「近場だから」と短い便を割り当てる。——前者は、欄があっても確認していないのと同じです。「あり」と記録された日が一日もない点呼記録簿は、かえって不自然に見えます。後者は過労運転(4-08)と同じで、正常な運転ができないおそれがある状態での運転を容認した形になり得ます。出せない日があることを前提に、代わりの手段を先に用意しておくこと。
確認の一問一答
貨物自動車運送事業輸送安全規則第3条第6項が、運行の業務に従事させてはならないとしているのはどのような乗務員等か。
疾病、疲労、睡眠不足その他の理由により、安全に運行の業務を遂行し、またはその補助をすることができないおそれがある乗務員等です。あわせて、事業者は乗務員等の健康状態の把握に努めなければならないとされています。
乗務前の点呼において報告を求め、確認を行う事項を三つ挙げよ。
①酒気帯びの有無、②疾病、疲労、睡眠不足その他の理由により安全な運転をすることができないおそれの有無、③道路運送車両法第47条の2第1項および第2項の規定による点検の実施またはその確認、です。
長距離運転または夜間の運転に従事する場合、事業者はどのような措置をとらなければならないか。
疲労等により安全な運転を継続することができないおそれがあるときは、あらかじめ交替するための運転者を配置しなければなりません(第3条第7項)。「あらかじめ」とあるとおり、計画の段階で配置するものです。