CHAPTER 5 ── 5-05
健康診断
— 深夜業に従事するなら6か月ごと
運送業の健康診断は、年1回では足りないことがあります。労働安全衛生規則第45条が、深夜業を含む業務に常時従事する労働者について、配置替えの際および6か月以内ごとに1回の健康診断を求めているからです。夜間運行のある事業所では、この規定が効いてきます。巡回指導でも受診の記録が見られる項目です。
SECTION 1試験ではこう問われる
年1回の健診と、6か月ごとの健診
労働安全衛生規則には、二つの定期健康診断が並んでいます。一つが第44条の定期健康診断で、常時使用する労働者に対し1年以内ごとに1回。もう一つが第45条の特定業務従事者の健康診断で、決められた業務に常時従事する労働者に対し、配置替えの際および6か月以内ごとに1回です。
その「決められた業務」は、同規則第13条第1項第3号のイからカまでに並んでいます。運送業に関係するのはヌ「深夜業を含む業務」。夜間にかかる運行に常時従事している運転者は、第45条の対象になります。第44条の条文が「第45条第1項に規定する労働者を除く」と書いているので、両方を受けるのではなく、どちらか一方です。
| 定期健康診断 第44条 | 常時使用する労働者(第45条第1項に規定する労働者を除く)に対し、1年以内ごとに1回 |
|---|---|
| 特定業務従事者の 健康診断 第45条 | 第13条第1項第3号の業務に常時従事する労働者に対し、配置替えの際および6か月以内ごとに1回。項目は第44条第1項各号と同じ ただし胸部エックス線検査および喀痰検査(第4号)は、1年以内ごとに1回で足りる |
| 対象になる業務 第13条第1項第3号ヌ | 深夜業を含む業務。ほかに、高熱物体・低温物体・有害放射線・粉じん・異常気圧・振動・重量物・強烈な騒音・坑内・有害物などが並ぶ |
設問では、6か月を1年にする形、胸部エックス線も6か月ごととする形が出ます。頻度が上がるのは、胸部エックス線と喀痰を除いた項目——ここが引っかけどころです。
そして事業法の側です。輸送安全規則第3条第6項が、乗務員等の健康状態の把握に努め、疾病・疲労・睡眠不足その他の理由により安全に運行の業務を遂行できないおそれがある乗務員等を、運行の業務に従事させてはならないと定めています(5-07)。健康診断は、この「把握」の中心にある手立てです。
SECTION 2現場ではこう現れる
受けさせることと、結果を使うことは別
健康診断は受診率で語られがちですが、受けさせただけでは何も変わりません。結果に所見があったときに、会社として何をするかが決まっていて初めて意味を持ちます。医師の意見を聴き、必要があれば就業上の措置——労働時間の短縮、深夜業の回数の減少、配置の転換——を検討する。その検討の記録が残っているかどうかが、巡回指導でも監査でも見られます。
実務でつまずくのは、結果が本人にしか渡らない形になっているときです。健診機関から本人へ直接、というやり方をしていると、会社は所見の有無を把握できません。健康状態の把握は事業者の義務ですから、結果を会社が受け取る形にしておく必要があります。ここは委託の契約のときに決めておくことです。
- ✓氏名/深夜業の有無◯◯・あり
- ✓前回の受診日◯年4月
- ✓次回の期限(6か月/1年)◯年10月
- ✓所見の有無あり
- ✓医師の意見・就業上の措置夜間便を外す
三行目があると、期限切れが起きません。一行目の「深夜業の有無」で6か月か1年かが決まりますから、この欄を先に埋めます。配車が変わって深夜業に入った運転者は、そこから6か月ごとに切り替わります。
受診を渋る運転者にどう向き合うか
健康診断を受けたがらない人はいます。理由はさまざまですが、「結果によっては乗れなくなるのではないか」という不安が背景にあることが少なくありません。ここで会社が示せるのは、所見が出ても直ちに乗務から外すわけではない、という運用の実際です。医師の意見を聴いたうえで、夜間便を外す、休憩を増やすといった調整から始まる。受けさせるための説明ではなく、受けたあとの扱いを説明するほうが、話が通ります。
SECTION 3不備だと、何が起きるか
健康起因の事故は、結果が重くなります
運転中に意識を失えば、車は止まりません。健康に起因する事故は件数としては多くありませんが、大型車の場合、被害が大きくなりやすいという性質があります(5-06)。そして事故のあとに確認されるのは、健康診断を受けさせていたか、所見があったのに乗務させていなかったか、という点です。
受診記録がない、あるいは所見があるのに何もしていない——この二つは、安全に運行の業務を遂行できないおそれがある者を従事させたという評価に直結します。逆に、所見を受けて夜間便を外した記録があれば、体制があったことの証拠になります。
深夜業がある運転者も一律に年1回で済ませる。所見のあった結果を、本人に「気をつけて」と渡して終わりにする。人手が足りないので、医師の意見を聴かないまま夜間便を続けさせる。——一つめは規則第45条の違反です。二つめと三つめは、把握はしたが措置をしなかった形で、事故のあとに最も説明が難しくなります。医師の意見を聴くこと自体は、乗務から外すことを意味しません。聴いたうえで、何をどう変えたかを書き残す。手順はそれだけです。
確認の一問一答
深夜業を含む業務に常時従事する運転者の健康診断は、どのくらいの頻度で行うか。
当該業務への配置替えの際および6か月以内ごとに1回です(労働安全衛生規則第45条第1項)。ただし、胸部エックス線検査および喀痰検査については1年以内ごとに1回で足りるとされています。
定期健康診断(第44条)の対象から除かれるのはどのような労働者か。
第45条第1項に規定する労働者、すなわち特定業務従事者の健康診断の対象となる労働者です。両方を重ねて受けるのではなく、第45条の対象者は6か月以内ごとの健康診断を受けます。
健康診断の結果に所見があった場合、事業者は何をすべきか。
医師の意見を聴き、必要があると認めるときは、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少、作業の転換その他の就業上の措置を講じます。検討した内容と講じた措置を記録に残しておくことが実務上の要点です。