CHAPTER 4 ── 4-09
交通事故のときの措置
— 停止・救護・危険防止、そして報告
事故が起きたとき、運転者がその場でしなければならないことは決まっています。直ちに運転を停止し、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じ、警察官に報告する。報告する内容も条文に列挙されています。運送業ではこれに、事業法の側の事故の記録と事故報告書(1-15)が続きます。その場ですることとあとで残すことを分けて持っておくのが要点です。
SECTION 1試験ではこう問われる
第72条第1項は、二つの文でできています
前段が措置義務、後段が報告義務です。前段は「直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない」。義務を負うのは運転者だけでなく、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員(運転者等)です。二人乗務の便では、二人ともが対象になります。ただし乗務員であることが要りますから、便乗している荷主の担当者などは含まれません。なお後段の報告義務は運転者にかかり、運転者が死亡または負傷して措置を講じられないときに、その他の乗務員が負います。
後段は、警察官への報告です。報告する内容は条文に列挙されています。①交通事故が発生した日時及び場所 ②死傷者の数及び負傷者の負傷の程度 ③損壊した物及びその損壊の程度 ④当該交通事故に係る車両等の積載物 ⑤当該交通事故について講じた措置。四つめに積載物が入っているのが、運送業では効きます。何を積んでいたかは、危険物であれば現場の扱いそのものを変えるからです。
第2項は、報告を受けた最寄りの警察署の警察官が、負傷者の救護や危険防止のため必要があると認めるときに、警察官が現場に到着するまで現場を去ってはならない旨を命ずることができるという規定です。第3項は、現場にいる警察官が運転者等に必要な指示をすることができるというもの。報告して終わりではないという並びになっています。
SECTION 2現場ではこう現れる
その場ですること、会社に伝えること、あとで残すこと
事故のときの手順は、三段に分けておくと現場が動けます。一段目が第72条の措置と報告。二段目が会社への連絡。三段目が、事業の側で残す記録です。一段目を運転者が、二段目以降を運行管理者が持つ——この分担を先に決めておきます。
三段目には、二つの別の書類があります。一つが輸送安全規則第9条の2の「事故の記録」。事故が発生した日時・場所、事故の当事者の氏名、事故の概要、原因、再発防止対策などを記録し、営業所に3年間保存します。人身・物損を問わず、すべての事故が対象です。もう一つが自動車事故報告規則の事故報告書で、こちらは規則が定める一定の事故に限られ、30日以内に提出します(1-15)。速報を要する事故もあります。
- ✓① 止まる・救護する・危険を防ぐ運転者
- ✓② 110番へ報告(五つの事項)運転者
- ✓③ 会社へ連絡(昼夜の連絡先)運転者
- ✓④ 事故の記録(規則第9条の2)運行管理者
- ✓⑤ 報告書の要否を判定運行管理者
③の連絡先は、夜間と休日の番号まで書いておきます。つながらない時間帯があると、運転者は自分で判断することになります。⑤は当日に決めなくてかまいませんが、翌日には見る。30日の起算は事故の日からです。
危険を防止する「等必要な措置」
条文は具体的な方法を書いていません。現場の状況によって変わるからです。実際には、後続車から見える位置に停止表示器材を置く、非常点滅表示灯を点ける、可能なら車を路肩に移す、といったことになります。高速道路の本線上では、停止表示器材の表示が道路交通法上の義務としてかかります(3-08で触れたとおり、車への備付けは保安基準の義務ではなく、高速道路上での表示が道路交通法の義務という関係です)。
そして、二次事故を避けるために人がどこに退避するかを決めておくこと。車内に残るのか、ガードレールの外に出るのか。高速道路上では車内待機が危険な場合があります。指導監督(1-20)で一度扱っておく項目です。
SECTION 3不備だと、何が起きるか
措置と報告を欠くと、事故そのものより重くなります
救護義務違反は、道路交通法のなかで最も重い部類の違反です。事故の過失より、その後に立ち去ったことのほうが重く扱われるという構造になっています。報告義務違反も別に罰則があります。事故の大小にかかわらず、止まって、救護して、報告する——ここを外さないことだけは、運転者に繰り返し伝える価値があります。
会社の側では、記録の有無が問われます。事故の記録が3年分そろっているか、報告書を要する事故で提出しているか。巡回指導でも監査でも見られる項目で、事故が起きたこと自体より、記録がないことのほうが指摘として残ります。
相手と話がついたので、警察には届けない。人身事故を物損として届け、後から人身に切り替える。軽微な物損は事故の記録に書かない。——一つめは報告義務違反です。当事者どうしの合意で外れる義務ではありません。二つめは、負傷の程度の報告を誤ったことになります。三つめは、輸送安全規則第9条の2が人身・物損を区別していないため、記録の欠落として扱われます。届けにくい事故ほど、届けておくほうが結果として軽い——これは実務で繰り返し確かめられることです。
確認の一問一答
交通事故があったとき、道路交通法第72条第1項前段により運転者等が講じなければならない措置を三つ挙げよ。
①直ちに車両等の運転を停止すること、②負傷者を救護すること、③道路における危険を防止する等必要な措置を講じること、の三つです。義務を負うのは運転者だけでなく、その車両等の乗務員も含まれます。
警察官に報告しなければならない事項を、条文に列挙されているとおり挙げよ。
①交通事故が発生した日時及び場所、②死傷者の数及び負傷者の負傷の程度、③損壊した物及びその損壊の程度、④当該交通事故に係る車両等の積載物、⑤当該交通事故について講じた措置、の五つです。
貨物自動車運送事業者が営業所に備える「事故の記録」の保存期間は何年か。また、物損事故は対象となるか。
3年間です(貨物自動車運送事業輸送安全規則第9条の2)。人身・物損を区別せず、事業用自動車に係る事故が対象となります。これとは別に、自動車事故報告規則が定める一定の事故については、30日以内に事故報告書を提出します。