CHAPTER 4 ── 4-08
過労運転と、下命・容認
— 使用者にかかる規定と、車の使用停止
第66条は「過労、病気、薬物の影響その他の理由により、正常な運転ができないおそれがある状態で車両等を運転してはならない」と定めています。短い条文ですが、運送業ではここに第75条が重なります。過労運転を命じ、または容認した使用者も違反となり、さらに公安委員会は6か月以内で車の運転を禁止する命令を出すことができます。
SECTION 1試験ではこう問われる
条文は一行、しかし射程は広い
第66条は一文でできています。何人も、前条第1項に規定する場合のほか、過労、病気、薬物の影響その他の理由により、正常な運転ができないおそれがある状態で車両等を運転してはならない。「前条第1項」は酒気帯び運転(4-07)ですから、それ以外の理由による運転の禁止をここでまとめて置いた形です。
並んでいるのは過労、病気、薬物の影響、その他の理由。薬物には、処方薬や市販薬で眠気を催すものも含まれます。そして「正常な運転ができないおそれがある状態」——現に事故を起こしていなくても、その状態で運転すれば違反です。
設問では、第66条に並んでいる理由(過労・病気・薬物の影響その他)を落とす形と、使用者にも規定があることを否定する形が出ます。第75条第1項第4号に、過労運転がそのまま挙げられています。
SECTION 2現場ではこう現れる
過労運転は、当日ではなく計画の段階で決まります
「疲れているなら休ませる」は正しいのですが、それだけでは足りません。その日に休ませられる余地が、計画に残っているかどうかが実際の分かれ目です。拘束時間が15時間で組まれ、休息期間が9時間ちょうどの運行を毎日続けていれば、疲労は積み上がります。当日の点呼で「疲れています」と言われても、代わりがいなければ出すことになる。
ですから、過労運転の防止は改善基準告示の枠を守ること(第2章)とほぼ同じ作業になります。1日の拘束時間(2-04)、2日平均の運転時間(2-05)、1か月の拘束時間(2-03)。これらが枠内に収まっている運行は、過労運転が起きにくい。逆に、枠を超えている月に事故が起きれば、計画そのものが原因として見られます。
- ✓前日の勤務終了時刻20:40
- ✓休息期間9時間20分
- ✓直近1週間の拘束時間78時間
- ✓服薬の有無なし
点呼のときに数字が手元にあると、「大丈夫か」の一言が具体的になります。三行目まで見て初めて、疲労が積み上がっているかどうかが分かる。感覚ではなく数字で聞くのが、この規定への現実的な対応です。
薬物には、市販薬も入ります
「薬物の影響」は、違法薬物だけを指すものではありません。眠気を催す成分を含む市販の風邪薬やアレルギーの薬も、正常な運転ができないおそれを生じさせるなら同じ扱いです。点呼で服薬の有無を聞くのは、このためです。運転者側も「市販薬だから問題ない」と考えがちなところですから、指導監督の場面で一度扱っておく価値があります(1-20)。
SECTION 3不備だと、何が起きるか
事故のあと、計画と記録が並べて見られます
居眠りや漫然運転による事故が起きたとき、確認されるのは運転者の証言だけではありません。その日までの拘束時間、休息期間、運転時間が日報と点呼記録簿から再構成されます。改善基準告示の枠を超えていれば、過労運転を容認した形として第75条が問題になり、事業の側でも輸送安全規則違反として扱われます。
そして、記録がない場合はさらに不利です。「疲労はなかった」と言うための材料が、会社の側にないことになります。拘束時間の集計表(2-01)や点呼記録簿は、平時には手間でしかありませんが、この場面では会社を守る側に働きます。
点呼で疲労を訴えた運転者に、「近場だけだから」と短い便を割り当てて出す。休息期間が足りない日の点呼記録簿に、実際より早い終業時刻を書く。——前者は、正常な運転ができないおそれがある状態での運転を容認したことになり得ます。後者は記録の作り替えで、日報や運行記録計と突き合わせれば分かります。出せない日は出さない。そのために、代わりの手段を先に用意しておく。順序はこれだけです。
確認の一問一答
道路交通法第66条は、どのような状態での運転を禁止しているか。理由として挙げられているものを含めて答えよ。
過労、病気、薬物の影響その他の理由により、正常な運転ができないおそれがある状態での運転です。酒気帯び運転(第65条第1項)については別に規定されています。
使用者が運転者に過労運転を命じ、または容認した場合、どの条文の対象となるか。また、その結果として何が命じられ得るか。
第75条第1項第4号の対象です。交通の危険を生じさせるおそれがあるときは、公安委員会が6か月を超えない範囲で当該自動車の運転を禁止する命令を出すことができます(同条第2項)。
「薬物の影響」には、医師の処方によらない市販薬は含まれない。○か×か。
×。眠気を催すなど、正常な運転ができないおそれを生じさせるものであれば、市販薬でも同様に扱われます。点呼での服薬の確認が実務上の受け皿になります。