CHAPTER 4 ── 4-07
酒気帯び運転と、その周囲
— 提供・すすめ・同乗まで、条文は「何人も」
第65条は四つの項でできています。運転してはならない、車両等を提供してはならない、酒類を提供し・飲酒をすすめてはならない、そのことを知りながら同乗してはならない。主語はいずれも「何人も」。運転した者だけの問題ではないという構造が、条文の形にそのまま出ています。運送業では、これに点呼のアルコール検知器(1-07)が重なります。
SECTION 1試験ではこう問われる
四つの項、主語はすべて「何人も」
第65条は短い条文です。四つの項があり、いずれも主語が「何人も」で始まります。運転した者だけを縛る規定ではない、という構造が、条文の形にそのまま出ています。
運転した者
- 何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない(第1項)
- 酒酔い運転と酒気帯び運転で罰則が分かれる
- 点数は一度で免許の取消しに至る水準
車・酒を渡した者
- 酒気を帯びている者で、運転することとなるおそれがある者に車両等を提供してはならない(第2項)
- 運転することとなるおそれがある者に酒類を提供し、または飲酒をすすめてはならない(第3項)
同乗した者
- 運転者が酒気を帯びていることを知りながら、その車を運転して自己を運送することを要求・依頼して同乗してはならない(第4項)
設問では、この四つのうちどれかを落とす形、あるいは「同乗した者は対象外」といった形で誤りが作られます。提供・すすめ・同乗まで条文に書かれているという点を押さえておけば取れます。
何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない。何人も、酒気を帯びている者で、前項の規定に違反して車両等を運転することとなるおそれがあるものに対し、車両等を提供してはならない。何人も、第一項の規定に違反して車両等を運転することとなるおそれがある者に対し、酒類を提供し、又は飲酒をすすめてはならない。何人も、車両(トロリーバス及び政令で定める重被牽引車を除く。)の運転者が酒気を帯びていることを知りながら、当該運転者に対し、当該車両を運転して自己を運送することを要求し、又は依頼して、当該運転者が第一項の規定に違反して運転する車両に同乗してはならない。
使用者の側にも、同じ違反があります
第75条第1項第3号は、酒気帯び運転を運転者に命じ、または容認してはならないと定めています(4-01)。第65条第2項の「車両等の提供」と重なる場面が多く、事業用自動車では会社が車を出しているわけですから、飲酒を知りながら乗せれば、提供にも容認にも当たり得ることになります。
SECTION 2現場ではこう現れる
点呼のアルコール検知器が、この条文の受け皿です
運送業では、この条文は点呼の形で日常の中に入っています。乗務前・乗務後の点呼で酒気帯びの有無を確認し、その際にアルコール検知器を用いる。検知器は営業所ごとに備え、常時有効に保持する(1-07)。そして確認したことを点呼記録簿に残す。道路交通法が「してはならない」と書いていることを、事業法の側が「毎日確かめよ」に変えている——この対応関係で見ると、点呼の意味が変わって見えます。
実務で問題になりやすいのは、前夜の飲酒が残っている場合です。本人に自覚がなくても検知器は反応します。ここで「今日は出せない」と言える体制になっているかどうか。代わりの運転者や便の組み替えができないと、現場は数字を見なかったことにしたくなります。検知器を置くことより、出せないと言えることのほうが難しい——ここに手当てが要ります。
- ✓① 数値を点呼記録簿に記入実測値
- ✓② 乗務させない旨を伝える運行管理者
- ✓③ 便の組み替え代替運転者
- ✓④ 荷主への連絡遅延の連絡
- ✓⑤ 個別の指導と記録教育記録へ
①を飛ばさないこと。数値を書かずに「異常なし」で処理すると、検知器を使ったことの記録が残りません。反応が出た日の記録こそ、体制があることの証拠になります。
会社の飲み会と、翌朝の運行
第65条第3項は、運転することとなるおそれがある者に酒類を提供し、または飲酒をすすめることを禁じています。翌朝に乗務がある運転者に、会社の席で飲ませる——直接の運転とは離れた場面でも、条文の射程には入り得ます。会社の行事の日程を、翌日の運行と突き合わせておく。地味ですが、実際に効く手当てです。
SECTION 3不備だと、何が起きるか
一度で、事業の側が大きく動きます
酒気帯び運転は、運転者本人の免許について一度で重い処分に至る水準の違反です。加えて事業の側では、点呼でのアルコール検知器の使用と記録が確認され、検知器を使っていなかった、記録がなかったとなれば、体制の不備として扱われます。監査の端緒としても重いものです。
そして、事故を伴った場合の影響は、金銭では測れない範囲に及びます。荷主との契約、保険、そして会社に残る記録。第4章のなかで、一度の違反が最も大きく効く項目です。だからこそ、毎日の点呼という形で、日常の手順に埋め込まれています。
検知器が反応したが、少し時間を置いて測り直し、下がったので出す。数値は記録せず「異常なし」とだけ書く。——測り直すこと自体は否定されませんが、「下がるまで測る」運用は、確認ではなく通過儀礼です。そして記録がなければ、確認した事実そのものが残りません。出せない日があることを前提に、代替の手段を先に用意しておく。手順がないから、その場しのぎが生まれます。
確認の一問一答
道路交通法第65条が禁じている行為を、運転すること以外に三つ挙げよ。
①酒気を帯びていて運転することとなるおそれがある者に車両等を提供すること、②運転することとなるおそれがある者に酒類を提供し、または飲酒をすすめること、③運転者が酒気を帯びていることを知りながら、その車で自己を運送することを要求・依頼して同乗すること、の三つです。
第65条の各項の主語は何か。
いずれも「何人も」です。運転者に限らず、車両等を提供した者、酒類を提供した者、同乗した者にも及ぶ構造になっています。
事業用自動車の乗務前点呼において、酒気帯びの有無の確認はどのように行うか。
目視等による確認に加えて、アルコール検知器を用いて行います。検知器は営業所ごとに備え、常時有効に保持しなければならず、確認した内容は点呼記録簿に記録します(1-05・1-07)。