CHAPTER 4 ── 4-06
過積載
— 運転者・使用者・荷主、三者にかかる
過積載は、運転者だけの問題では終わらない数少ない違反です。運転者には反則金と点数。使用者には、下命・容認の禁止(第75条)と、公安委員会からの指示。そして荷主には、要求や引渡しの禁止と、警察署長による再発防止命令。三者それぞれに規定が置かれているという形を知っておくと、荷主と話すときの足場になります。
SECTION 1試験ではこう問われる
三者それぞれに、別の条文が置かれています
過積載は、道路交通法のなかでも珍しい構造をしています。運転者を罰するだけでは減らないという前提に立って、使用者と荷主にもそれぞれ規定が用意されている。第57条から第58条の5までの並びを、誰にかかるものかで読み分けると整理できます。
運転者
- 最大積載重量を超える積載をして運転してはならない(第57条第1項)
- 警察官は、過積載の車両の運転者に対し、積載重量の制限を超えない状態にするための応急の措置を命ずることができる(第58条の3)
- 反則行為として点数と反則金。超過の程度が大きければ反則の対象を外れる
使用者
- 過積載をして運転することを命じ、または容認してはならない(第75条第1項第6号)
- 措置命令が出たあとも過積載を防止するために必要な運行の管理を行っていないと認めるときは、公安委員会が使用者に対し、積載重量をあらかじめ確認するよう指導・助言することなどを指示できる(第58条の4)
- 指示を受けた日から1年以内に更に違反行為が行われ、著しく交通の危険を生じさせるおそれがあるときは、3か月を超えない範囲での使用制限命令(第75条の2第1項)
荷主
- 運転者に対し、過積載をして運転することを要求してはならない(第58条の5第1項第1号)
- 過積載となることを知りながら、制限を超える積載物を売り渡し、または引き渡してはならない(同第2号)
- 反復するおそれがあると認めるときは、警察署長が再発防止を命ずることができる(同第2項)
設問になりやすいのは、誰が何をできるかの対応です。運転者への措置命令は警察官、使用者への指示は公安委員会、荷主への再発防止命令は警察署長。主体が三つとも違います。
第七十五条第一項に規定する使用者等以外の者は、次に掲げる行為をしてはならない。一 車両の運転者に対し、過積載をして車両を運転することを要求すること。二 車両の運転者に対し、当該車両への積載が過積載となるとの情を知りながら、第五十七条第一項の制限に係る重量を超える積載物を当該車両に積載をさせるため売り渡し、又は当該積載物を引き渡すこと。
SECTION 2現場ではこう現れる
「重さを量る段階」を、誰かが持っているかどうか
過積載が起きる会社と起きない会社の違いは、意識ではなく手順にあります。積んだ荷の重さを、出発前に誰かが確かめているか。伝票の数量から計算しているか。それとも、荷主の指示どおり積んで、そのまま出しているか。量る段階が手順のどこにもないと、過積載は運任せになります。
輸送安全規則の側にも規定があります。第4条(過積載の防止)——事業者は、過積載による運送の防止について、運転者その他の従業員に対する適切な指導及び監督を怠ってはならない。条文は指導監督の義務として書かれています。「引き受けてはならない」とは書かれていませんが、指導監督を尽くすには受注の段階から仕分けるほかありませんから、実務としては引受けの手前まで戻ることになります。なお、荷の積み方そのもの(偏荷重の防止、ロープ・シートの使用)は第5条(貨物の積載方法)です。
- ✓車両の最大積載量3,000kg
- ✓荷の重量の把握方法伝票+計量
- ✓誰が確認するか運行管理者
- ✓超えたときの手順積み替え・分割
- ✓荷主への連絡先担当◯◯
四行目と五行目がないと、超えたことが分かっても現場は出発します。積み替えの手段と、荷主に断る先を先に決めておく。断る判断を運転者にさせないことが、この規定の実務上の要点です。
荷主に伝えられること
荷主に対しては、要求の禁止と引渡しの禁止が条文で定められており、警察署長による再発防止命令まであります。これは荷主にとっても自社のリスクであるということです。無理な積載を断るとき、感情ではなく条文で説明できると、話が早く終わります。標準的運賃や荷待ち時間の記録(1-11)と同じで、記録と条文が、交渉の材料になるという形です。
SECTION 3不備だと、何が起きるか
車が止まり、荷主にも命令が届きます
過積載が繰り返されれば、まず公安委員会から使用者への指示(第58条の4)。その指示を受けた日から1年以内に更に違反行為が行われ、著しく交通の危険を生じさせるおそれがあると認められれば、3か月を超えない範囲での使用制限命令に進みます(第75条の2第1項)。車が使えない期間が生じるのは、整備命令の場合(3-09)と同じです。加えて、事業の側では輸送安全規則違反として監査・行政処分の対象になります。
なお、期間の数字は二とおりあります。下命・容認(第75条第1項)からの使用制限命令は6か月を超えない範囲(4-01)、指示の反復(第75条の2)からは3か月を超えない範囲。どちらの経路かで期間が変わります。
そして荷主にも、警察署長からの再発防止命令が届きます。取引先に命令が出るという事態は、その後の関係に影響します。過積載を断ることが取引を失うことのように感じられる場面は現実にありますが、続けたときに失うもののほうが大きい——条文の構造が、そのことを前提に組まれています。
最大積載量を超えるので、車検証上の数字が大きい別の車の車番で日報を書く。伝票の数量を実際より少なく書いてもらう。——前者は記録の作り替え、後者は荷主を巻き込んだ形になります。過積載の確認は路上で車両重量計を使って行われますから、書類の側をいくら整えても意味がありません。積めないなら、積まない。運べないなら、便を分ける。その判断を現場に任せず、会社が決めることです。
確認の一問一答
過積載の車両の運転者に対して、積載重量の制限を超えない状態にするための応急の措置を命ずることができるのは誰か。
警察官です(第58条の3)。使用者に対する指示は公安委員会(第58条の4)、荷主に対する再発防止命令は警察署長(第58条の5第2項)で、主体がそれぞれ異なります。
荷主に対して禁止されている行為を二つ挙げよ。
①車両の運転者に対し、過積載をして車両を運転することを要求すること、②過積載となるとの情を知りながら、制限に係る重量を超える積載物を積載させるために売り渡し、または引き渡すこと、の二つです(第58条の5第1項)。
使用者が過積載を防止するために必要な運行の管理を行っていないと認められる場合、公安委員会は使用者に対してどのようなことを指示できるか。
運転者に対し、車両の積載物の重量をあらかじめ確認することを指導し、または助言すること、その他過積載を防止するため必要な措置をとることを指示できます(第58条の4)。