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運行管理の教科書 / 第2章 改善基準告示・労働基準法 / 2-03

CHAPTER 2 ── 2-03

1か月・1年の拘束時間
— 284時間・3,300時間と、労使協定でどこまで延ばせるか

公開 2026.09.07 内容の確認日 2026.09.07 読了目安 9分
試験 頻出巡回指導 重点第2章 拘束時間

トラック運転者の拘束時間は、原則が1か月284時間、1年3,300時間。労使協定を結べば1年のうち6か月まで1か月310時間、1年3,400時間まで延ばせますが、284時間を超える月は連続3か月までという枠がかかります。数値が四つ並ぶので混乱しやすいところですが、「原則」「協定あり」「回数の枠」「連続の枠」の四段で見れば整理できます。

SECTION 1試験ではこう問われる

原則は284時間と3,300時間、協定を結んで310時間と3,400時間

トラック運転者の1か月・1年の拘束時間は、原則と例外の二段で決まっています。原則は1か月284時間、1年3,300時間。労使協定を結べば、1年について6か月までは1か月310時間まで延ばすことができ、そのとき1年の総拘束時間は3,400時間を超えないこと、とされています。ここまでは覚えやすいのですが、設問はたいてい、この先にある二つの枠で作られます。

2024.04 ── 1か月・1年の拘束時間(トラック)
 原則労使協定を結んだ場合
1年の拘束時間3,300時間以内3,400時間以内
1か月の拘束時間284時間以内310時間以内
310時間まで延ばせる月数—1年について6か月まで
284時間を超える月の連続—連続3か月まで
時間外・休日労働の合計—1か月100時間未満となるよう努める(延長する場合の努力義務)

枠の一つめが回数です。310時間まで延ばせるのは1年のうち6か月まで。7か月目はもう延ばせません。二つめが連続です。284時間を超える月は、連続3か月までしか続けられません。4か月続けて284時間を超えれば、たとえ各月が310時間以内でも、また年間の合計が3,400時間以内でも違反になります。この二つは別々の枠で、両方を同時に満たす必要があります。

労使協定を結んだ場合の1年(4月起算の例) 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 310 ① 310 ② 300 ③ 284 270 310 ④ 295 ⑤ 280 310 ⑥ 265 272 284 ■ 284時間を超えた月=①②③④⑤⑥の6か月。7か月目は延ばせない ■ 連続で超えたのは①②③の3か月まで。4か月続ければ、各月が310時間以内でも違反 ■ 12か月の合計は3,400時間以内であること(原則は3,300時間) この例の合計 3,490時間 → 3,400時間を超えており、年の枠で違反
図 2-03-1月ごとに見て枠内でも、回数・連続・年合計のどれかで外れることがあります。設問はこの三つのうち一つだけを外して作られます。
根拠 ── 自動車運転者の労働時間等の改善のための基準 第4条第1項第1号・第2号(要旨)

拘束時間は、1か月について284時間を超えず、かつ、1年について3,300時間を超えないものとすること。ただし、労使協定により、1年について6か月までは、1年についての拘束時間が3,400時間を超えない範囲内において、1か月について310時間まで延長することができる。この場合において、1か月の拘束時間が284時間を超える月が3か月を超えて連続しないものとし、かつ、1か月の時間外労働及び休日労働の合計時間数が100時間未満となるよう努めるものとする。

SECTION 2現場ではこう現れる

労使協定は、届け出るものではなく、備えておくものです

拘束時間を延長するための労使協定は、事業場の過半数労働組合、それがなければ過半数を代表する者との書面による協定です。36協定と違って労働基準監督署への届出は必要ありませんが、締結していなければ延長できません。「うちは310時間で回している」という会社で協定が見当たらない、有効期間が切れたまま更新されていない、という例は珍しくありません。監査でも巡回指導でも、集計表と一緒に見られます。

もう一つ、実務で効くのが起算日です。1か月の拘束時間は暦月で見るのが基本ですが、就業規則や勤務割表等で特定の日を起算日と定めていれば、暦月以外の区切りで管理しても差し支えないとされています。給与計算の締日に合わせておくと、集計の手間がひとつ減ります。ただし事業場で統一して管理することが前提です。人によって締日が違う、という状態は避けます。

拘束時間の労使協定 確認の6点◯年◯月/熊本東営業所
  • ✓書面で締結しているか有
  • ✓相手方(過半数代表者)の選出方法投票
  • ✓有効期間の終期◯年3月31日
  • ✓310時間まで延長できる月の特定6か月
  • ✓起算日(暦月/締日)の定め1日起算
  • ✓営業所ごとに締結しているか2営業所

協定は事業場ごとです。営業所が二つあれば二通。本社でまとめて一通、という形になっていないかを最初に見ます。届出は不要ですが、監査のときに出せる場所に置いておくこと。

年の枠は、終盤で急に効いてきます

1か月の枠は毎月リセットされますが、1年の枠は積み上がります。上期に月300時間前後で回していると、下期に入ったところで残りが少ないことに気づく——これがいちばん多いつまずき方です。3,400時間を12で割れば月283時間ですから、年間で見れば「ほぼ原則の284時間で回すのが標準」という設計になっています。310時間を6か月使う運用は、残りの6か月をかなり抑えることとセットでしか成り立ちません。年度の累計欄を集計表に入れておくと、この事実が毎月見えます。

SECTION 3不備だと、何が起きるか

年の枠を超えると、その年度は取り返しがつきません

1日の拘束時間や連続運転時間の違反は、翌日から直せます。しかし1年の拘束時間を超えてしまうと、その年度の中で回復する手段がありません。運行を止めるか、超過を記録に残したまま年度末を迎えるかのどちらかです。改善基準告示の中で、事後の対応がいちばん効かないのが年の枠だという点は、押さえておいたほうがいい。

監査では、まず1か月の集計が求められ、そこから年間の累計に進みます。労使協定がないのに284時間を超えていれば、その時点で協定なしの超過という扱いになります。違反が確認されれば労働基準監督署の是正勧告の対象であり、相互通報の仕組みを通じて運輸局の監査にもつながります(2-01)。処分の量定は公示で定められており、違反の内容と件数によって変わります。

やってはいけない直し方

年の枠に近づいたので、12月以降の日報の帰庫時刻を早めに書かせる。あるいは、超えそうな運転者の運行を別の運転者の名前で記録する。——どちらも記録の作り替えで、運行記録計や点呼記録簿と突き合わせれば分かります。年の枠が見えてきたら、その時点で運行の受け方を変えるしかありません。だからこそ、年度の累計を毎月見ておく必要があります。

確認の一問一答

労使協定を締結した場合、1年について6か月までは1か月の拘束時間を310時間まで延長することができるが、このとき1年についての拘束時間は何時間を超えないものとされているか。

3,400時間です。協定がない場合の原則は1か月284時間・1年3,300時間で、協定によって延長できるのは1か月310時間・1年3,400時間までです。

労使協定を締結している事業場において、4月から7月までの4か月間、いずれも1か月の拘束時間が290時間であった。この場合、改善基準告示に違反しない。○か×か。

×。各月は310時間以内ですが、284時間を超える月が4か月連続しています。284時間を超える月は3か月を超えて連続してはならないため、違反です。

拘束時間を延長するための労使協定は、所轄労働基準監督署長に届け出なければならない。○か×か。

×。届出は必要とされていません。ただし書面による協定であることが必要で、締結していなければ延長はできません。事業場ごとに締結し、監査等の際に提示できるようにしておきます。

根拠自動車運転者の労働時間等の改善のための基準 第4条第1項第1号・第2号/自動車運転者の労働時間等の改善のための基準の一部改正等について(令和4年12月23日 基発1223第3号)/改善基準告示(令和6年4月1日適用)に関するQ&A(厚生労働省)
確認本記事は告示・通達および厚生労働省の公表資料にもとづき作成し、記載の確認日時点の制度を反映しています。改善基準告示の運用は解釈通達とQ&Aで補われており、個別の運行がどの規定にあたるかは事案ごとに判断が必要です。実際の運行計画づくりの際は最新の通達および労働基準監督署・運輸支局の案内をご確認のうえ、個別の判断は必ずご相談ください。

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