CHAPTER 2 ── 2-03
1か月・1年の拘束時間
— 284時間・3,300時間と、労使協定でどこまで延ばせるか
トラック運転者の拘束時間は、原則が1か月284時間、1年3,300時間。労使協定を結べば1年のうち6か月まで1か月310時間、1年3,400時間まで延ばせますが、284時間を超える月は連続3か月までという枠がかかります。数値が四つ並ぶので混乱しやすいところですが、「原則」「協定あり」「回数の枠」「連続の枠」の四段で見れば整理できます。
SECTION 1試験ではこう問われる
原則は284時間と3,300時間、協定を結んで310時間と3,400時間
トラック運転者の1か月・1年の拘束時間は、原則と例外の二段で決まっています。原則は1か月284時間、1年3,300時間。労使協定を結べば、1年について6か月までは1か月310時間まで延ばすことができ、そのとき1年の総拘束時間は3,400時間を超えないこと、とされています。ここまでは覚えやすいのですが、設問はたいてい、この先にある二つの枠で作られます。
| 原則 | 労使協定を結んだ場合 | |
|---|---|---|
| 1年の拘束時間 | 3,300時間以内 | 3,400時間以内 |
| 1か月の拘束時間 | 284時間以内 | 310時間以内 |
| 310時間まで延ばせる月数 | — | 1年について6か月まで |
| 284時間を超える月の連続 | — | 連続3か月まで |
| 時間外・休日労働の合計 | — | 1か月100時間未満となるよう努める(延長する場合の努力義務) |
枠の一つめが回数です。310時間まで延ばせるのは1年のうち6か月まで。7か月目はもう延ばせません。二つめが連続です。284時間を超える月は、連続3か月までしか続けられません。4か月続けて284時間を超えれば、たとえ各月が310時間以内でも、また年間の合計が3,400時間以内でも違反になります。この二つは別々の枠で、両方を同時に満たす必要があります。
拘束時間は、1か月について284時間を超えず、かつ、1年について3,300時間を超えないものとすること。ただし、労使協定により、1年について6か月までは、1年についての拘束時間が3,400時間を超えない範囲内において、1か月について310時間まで延長することができる。この場合において、1か月の拘束時間が284時間を超える月が3か月を超えて連続しないものとし、かつ、1か月の時間外労働及び休日労働の合計時間数が100時間未満となるよう努めるものとする。
SECTION 2現場ではこう現れる
労使協定は、届け出るものではなく、備えておくものです
拘束時間を延長するための労使協定は、事業場の過半数労働組合、それがなければ過半数を代表する者との書面による協定です。36協定と違って労働基準監督署への届出は必要ありませんが、締結していなければ延長できません。「うちは310時間で回している」という会社で協定が見当たらない、有効期間が切れたまま更新されていない、という例は珍しくありません。監査でも巡回指導でも、集計表と一緒に見られます。
もう一つ、実務で効くのが起算日です。1か月の拘束時間は暦月で見るのが基本ですが、就業規則や勤務割表等で特定の日を起算日と定めていれば、暦月以外の区切りで管理しても差し支えないとされています。給与計算の締日に合わせておくと、集計の手間がひとつ減ります。ただし事業場で統一して管理することが前提です。人によって締日が違う、という状態は避けます。
- ✓書面で締結しているか有
- ✓相手方(過半数代表者)の選出方法投票
- ✓有効期間の終期◯年3月31日
- ✓310時間まで延長できる月の特定6か月
- ✓起算日(暦月/締日)の定め1日起算
- ✓営業所ごとに締結しているか2営業所
協定は事業場ごとです。営業所が二つあれば二通。本社でまとめて一通、という形になっていないかを最初に見ます。届出は不要ですが、監査のときに出せる場所に置いておくこと。
年の枠は、終盤で急に効いてきます
1か月の枠は毎月リセットされますが、1年の枠は積み上がります。上期に月300時間前後で回していると、下期に入ったところで残りが少ないことに気づく——これがいちばん多いつまずき方です。3,400時間を12で割れば月283時間ですから、年間で見れば「ほぼ原則の284時間で回すのが標準」という設計になっています。310時間を6か月使う運用は、残りの6か月をかなり抑えることとセットでしか成り立ちません。年度の累計欄を集計表に入れておくと、この事実が毎月見えます。
SECTION 3不備だと、何が起きるか
年の枠を超えると、その年度は取り返しがつきません
1日の拘束時間や連続運転時間の違反は、翌日から直せます。しかし1年の拘束時間を超えてしまうと、その年度の中で回復する手段がありません。運行を止めるか、超過を記録に残したまま年度末を迎えるかのどちらかです。改善基準告示の中で、事後の対応がいちばん効かないのが年の枠だという点は、押さえておいたほうがいい。
監査では、まず1か月の集計が求められ、そこから年間の累計に進みます。労使協定がないのに284時間を超えていれば、その時点で協定なしの超過という扱いになります。違反が確認されれば労働基準監督署の是正勧告の対象であり、相互通報の仕組みを通じて運輸局の監査にもつながります(2-01)。処分の量定は公示で定められており、違反の内容と件数によって変わります。
年の枠に近づいたので、12月以降の日報の帰庫時刻を早めに書かせる。あるいは、超えそうな運転者の運行を別の運転者の名前で記録する。——どちらも記録の作り替えで、運行記録計や点呼記録簿と突き合わせれば分かります。年の枠が見えてきたら、その時点で運行の受け方を変えるしかありません。だからこそ、年度の累計を毎月見ておく必要があります。
確認の一問一答
労使協定を締結した場合、1年について6か月までは1か月の拘束時間を310時間まで延長することができるが、このとき1年についての拘束時間は何時間を超えないものとされているか。
3,400時間です。協定がない場合の原則は1か月284時間・1年3,300時間で、協定によって延長できるのは1か月310時間・1年3,400時間までです。
労使協定を締結している事業場において、4月から7月までの4か月間、いずれも1か月の拘束時間が290時間であった。この場合、改善基準告示に違反しない。○か×か。
×。各月は310時間以内ですが、284時間を超える月が4か月連続しています。284時間を超える月は3か月を超えて連続してはならないため、違反です。
拘束時間を延長するための労使協定は、所轄労働基準監督署長に届け出なければならない。○か×か。
×。届出は必要とされていません。ただし書面による協定であることが必要で、締結していなければ延長はできません。事業場ごとに締結し、監査等の際に提示できるようにしておきます。