役員法令試験 ── H-01
条文集の引き方
— 覚える試験ではなく、引く試験です
一般貨物の許可申請では、常勤の役員の方が法令試験を受けます。この試験の最大の特徴は、条文集が貸し出されることです。つまり、条文を暗記しているかではなく、設問を読んで、どの法令の何条を開けばよいかが分かるかを見られます。条文集の地図を頭に入れておくこと。準備の中身は、ほとんどそれに尽きます。
SECTION 1条文集には、何が入っているか
13の法令。前半の五つが、運送事業の本体です
試験で貸し出される条文集は、国土交通省が編集し、内容が更新されています。収録されているのは13の法令・告示。ページ数で見ると道路交通法がいちばん厚いのですが、設問の重心は前半の五つ——貨物自動車運送事業法と、その施行規則、輸送安全規則、そして報告関係——にあります。まず、この地図を持ってください。
条文集は試験のときに貸し出され、終了後に回収されて次回の試験にも使われます。そのため書込みは厳禁です。付箋やインデックスを貼れるかどうかは当日の指示に従ってください。自宅での練習には、国土交通省が公開している同じ条文集を印刷して使うのが確実です。
SECTION 2本番では、こう引く
設問の語を拾い、法令を決め、目次で条を絞り、語尾を確かめる
引き方には型があります。設問を読んで条文集をめくり始めるのではなく、先に法令を決めてから開く。この一手があるかどうかで、一問にかかる時間が変わります。
キーワードから法令へ、の対応を先に体に入れる
「点呼」と出たら輸送安全規則、「事業計画」と出たら事業法、「日常点検」なら道路運送車両法。この対応さえ即答できれば、あとは目次を追うだけです。逆に言えば、ここで迷うと一問に何分もかかります。準備の中心は、条文の暗記ではなく、この対応表を体に入れることです。
- →点呼/記録/運行指示書/台帳/指導監督/事故の記録③ 輸送安全規則
- →許可/事業計画/運賃・料金/約款/名義/運行管理者① 事業法
- →軽微な事項/届出の様式/選任の届出② 施行規則
- →速報/事故報告書/30日以内⑤ 事故報告規則
- →車検/日常点検/定期点検/整備管理者⑦ 車両法
- →拘束時間/休息期間/連続運転⑩ 改善基準
- →優越的地位/不当な取引/代金の支払遅延⑫⑬
この対応が即答できるようになれば、条文集は「読む本」ではなく「引く道具」に変わります。H-03の頻出マップは、この一枚を条ごとに細かくしたものです。
時間の配り方
最初に全問を一度読み、引かずに答えられる問題を先に片づけます。残りを、引く必要のある順に処理する。最後に見直す時間を残しておく。この配分を、練習のときから同じようにやっておくと、本番で慌てません。試験の出題数・時間・合格基準・受験の機会は運輸局の公示によりますので、受験の前に必ず九州運輸局の最新の案内をご確認ください。
SECTION 3引けないと、何が起きるか
条文集があっても、引けなければ持っていないのと同じです
この試験で落ちる方の多くは、法令を知らないから落ちるのではありません。どこに書いてあるかが分からず、時間が足りなくなるのです。手元に答えがあるのに間に合わない——これがこの試験のいちばん多い失敗の形です。だから準備は、条文を読み込むことではなく、引く動作を繰り返すことに置きます。
そして、この試験は許可申請の手続の一部です。受験の機会には限りがあり、不合格が続けば申請そのものが却下される取扱いになっています。取扱いの詳細は公示によりますが、一回目で通す前提で準備するのが結局いちばん早い、という点は変わりません。申請から開業までの日程は、この試験の日程に引きずられます。
国土交通省が公開している条文集を印刷し、過去の問題や当事務所の練習問題を、実際にその条文集を引きながら解いてみてください。何ページを開いたかを記録しておくと、自分がどの法令で迷うかが見えます。読んで覚えるより、引いて覚えるほうが、この試験には合っています。
確認の一問一答
「点呼の実施と記録」に関する設問は、条文集のどの法令を引くか。
③ 貨物自動車運送事業輸送安全規則です。点呼、業務記録、運行指示書、運転者等台帳、指導監督、事故の記録——日々の運行管理まわりは、ほぼこの規則に集まっています。
「営業所の位置の変更」に関する設問は、どの法令を引くか。
① 貨物自動車運送事業法です(事業計画の変更)。あわせて、軽微な事項の範囲は② 施行規則で確かめます。二冊にまたがる論点は、この形が多いと考えてください。
「拘束時間」「休息期間」に関する設問は、どの法令を引くか。
⑩ 自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(厚生労働省告示)です。労働基準法(⑨)と隣り合っていますが、時間の数字が問われるのは告示の側です。