CHAPTER 5 ── 5-13
総点検
— 第1章から第4章までを、1枚に戻す
ここまでの五つの章を、一つの営業所の一日に並べ直します。朝の点呼から、運行の指示、日中の記録、帰着の点呼、月末の集計、年に一度の教育計画と健康診断まで。条文は分野ごとに書かれていますが、現場では同じ一日の中で交差します。どの帳票がどの条文に対応しているかを一覧にしておくと、巡回指導の通知が来ても慌てません。
SECTION 1試験ではこう問われる
帳票と条文の、対応表を持つ
試験では分野ごとに問われますが、現場では一つの営業所にすべてが同時にあります。どの帳票が、どの条文にもとづき、何年残すのか——これを一覧にしておくと、巡回指導の通知が来ても、運行管理者が交代しても、たどれます。保存年限は1年と3年が混ざっているので、ここだけでも表にする値打ちがあります。
| 点呼記録簿 | 酒気帯び・疾病・疲労・睡眠不足・日常点検の確認を記録。1年保存輸送安全規則 第7条/1-05・5-07 |
|---|---|
| 業務の記録(運転日報) | 業務の開始・終了、休憩、走行距離、荷待ちの時間など。1年保存輸送安全規則 第8条/1-11 |
| 運行記録計の記録 | 瞬間速度・運行距離・運行時間。車両総重量7トン以上または最大積載量4トン以上等。1年保存輸送安全規則 第9条/5-12 |
| 事故の記録 | 人身・物損を問わず、事故の概要・原因・再発防止対策。3年保存輸送安全規則 第9条の2/1-15 |
| 指導及び監督の記録 | 一般的な指導(12項目)と特別な指導。3年保存輸送安全規則 第10条/5-03・5-04 |
| 運転者等台帳 | 免許の種類・番号・条件、事故歴、指導の状況。運転者でなくなった日から3年輸送安全規則 第9条の5/1-14・4-10 |
| 点検整備記録簿 | 定期点検の年月日・結果・整備の概要など。1年保存(車両により異なる)道路運送車両法 第49条/3-06 |
| 健康診断の記録 | 定期は1年以内ごと、深夜業を含む業務は6か月以内ごと。所見への措置も残す労働安全衛生規則 第44条・第45条/5-05 |
| 拘束時間・運転時間の集計 | 1日の拘束時間、2日平均の運転時間、1か月の拘束時間改善基準告示/第2章・5-02 |
保存年限は1年のものと3年のものに分かれます。1年=点呼記録簿・日報・運行記録計・点検整備記録簿。3年=事故の記録・指導監督の記録・運転者等台帳。この分け方で覚えると、設問で入れ替えられても気づけます。
SECTION 2現場ではこう現れる
一年の暦に、周期のあるものを並べる
毎日やること、3か月ごとにやること、6か月ごと、年に1回。周期の違うものが並行して走っているのが、運送業の一年です。暦にしておくと、抜けたときに気づけます。
随時に起きるものを、どう拾うか
暦に置けないのが三つあります。採用したとき(初任診断と、座学15時間・実技20時間/5-04)、事故を起こしたとき(特定診断と特別な指導、事故の記録/1-15・4-09・5-04)、65歳になったとき(適齢診断/5-04)。どれも、起きてから期限が動き出します。
拾い方は一つで、運転者等台帳を月に一度めくることです。生年月日が入っていますから、今年65歳になる人が分かります。採用日が入っていますから、初任の指導が終わっているかも分かります。台帳は、作って仕舞う書類ではなく、毎月見る書類——そう位置づけると、この三つは拾えます。
SECTION 3不備だと、何が起きるか
巡回指導の通知は、だいたい一か月前に来ます
適正化事業実施機関の巡回指導は、事前に通知があり、そのときに準備する書類の一覧が示されます。一か月あれば、足りない記録に気づけます。ただし、気づいてから作れるものと、作れないものがあります。これから記録を残すことはできても、過去にさかのぼって作ることはできません。
この章の対応表は、通知が来てから作るのでは間に合いません。平時に一枚作っておき、四半期に一度、抜けがないか見る。それだけで、通知が来たときにやることは「確認」だけになります。準備ではなく確認で済む状態を作っておくのが、この一覧の目的です。
巡回指導の通知が来てから、足りない記録をまとめて作る。——これがいちばん多く、いちばん危ない直し方です。日付をさかのぼって作られた記録は、他の記録と突き合わせれば分かります。点呼記録簿の筆跡が全部同じ、教育記録の署名が同じ日に集まっている、日報と運行記録計の時刻が合わない。記録の不備より、記録の作り替えのほうが重く扱われます。足りないものは足りないと申告し、その日から始める。これは実務で繰り返し確かめられることです。
この教科書の使い方
第1章から第5章まで、66本を並べてきました。試験のためであれば、章の順に読むのが早い。実務のためであれば、いま自社で足りていない帳票の記事から読むほうが役に立ちます。どの記事にも、末尾に根拠となる条文を置いてあります。条文にあたるところまでを、記事の役目と考えて書きました。
確認の一問一答
保存期間が1年のものと3年のものを、それぞれ二つずつ挙げよ。
1年は点呼記録簿、業務の記録(運転日報)、運行記録計の記録など。3年は事故の記録、指導及び監督の記録、運転者等台帳(運転者でなくなった日から3年)などです。
暦に置けない、随時に起きる手続を三つ挙げよ。
①運転者を採用したとき(初任診断、座学15時間以上と実技20時間以上の特別な指導)、②事故を起こしたとき(特定診断、特別な指導、事故の記録)、③65歳になったとき(適齢診断とその結果に基づく指導)です。
巡回指導の通知を受けてから記録を整えるとき、してはならないことは何か。
過去にさかのぼって記録を作ることです。他の記録との突き合わせで判明し、記録の不備より重く扱われます。足りないものは申告し、その時点から正しく記録を始めるほかありません。